神のシナリオを彼等は如何に綴っていくのか
今回は設定説明です。本編は次回から。
あらかじめ言っておきます。
この作品はコメディです。
「お…おわ…った」
天空から舞い降りてくる巨影に、智史は思わず呟いた。智史の耳に彼をこの世界に送り込んだ者の声が甦る。
『最悪、死んで遺伝子情報をばら撒くだけでも結構ですよ』
時を少し遡る。
智史は身動きが取れない状態で目覚めた。何かカプセルの様な物に入っている事しか分からない。確か公園のベンチでウトウトしていたと思うが、なぜこんな物に入れられているのか?智史が不安に慄いていると、アナウンスが始まった。
『あなた達はこれから別の世界に投下されます』
どうやら智史のほかにも同じ状態の者がいるらしい。あちこちから「どういう事!?」「ふざけんな!」「家に帰して」と言った、不安と不満の入り交じった声が上がった。
『我々はこの宇宙の上位統括官の命を受け、遺伝子進化を促すため他世界の生物を別世界に送り込んでいます。』
あちこちで怒声が上がるが、声は怯む様子も戸惑う様子もなく続ける。
『言わば異種交雑のためあなた達と言う魚を別の水槽に移す役割を担っています。あなた達は水槽の魚を移動させる時に魚の都合を考えますか?
我々が今こんな説明をするのは、あなた達とは意思の疎通が可能であり、目的を知って頂いた方が我々にとり都合が良いからにすぎません。
我々の目的は遺伝子の交配、あなた達にやってほしいのは新しい世界で子孫を増やす事です。その方が進化が早まりますので。
まあ最悪、死んで遺伝子をばら撒くだけでも結構ですよ。
では、これよりあなた達に投下される世界の基礎情報や言語を脳に直接刷り込みます。
終了次第それぞれの世界に投下しますので、心の準備をしてください』
智史の投下される世界は地球人とあまり変わらないヒト科、身体能力の高い獣人科、特殊能力を持つ有角科が共存しており相互交配可能な世界のようだ。混血種はなく、男は父親と同じ、女は母親と同じ種に生まれる。ドラゴンの様な魔力を持つ生物も存在しているが、文明程度は地球とほぼ同じ(ちなみにスマホは電池式であった)。
政治形態は都市国家規模が主体で、複数の都市を有する国家はあまり無い。都市と都市は三十から五十キロ離れているのが常であるようだった。
智史が投下されたのはエリア9-Dと呼ばれる世界の、ある都市の廃墟だった。
竜のモニュメントが設置された広場は煤けており、人影はない。建造物は大半破壊されており利用出来そうな物は残されていない。捨てられて何年も経つらしく、舗装された道は植物に割られている。
智史が入っていたカプセルはいつの間にか消滅している。
街の探索に疲れ、途方にくれた智史がふと空を見上げると天空から舞い降りてくる竜の巨影があった。
「お…終わった…」
そう智史が呟いた直後、竜の背から声がした。
「きみ、ここで何をしているんだい?」
竜の背には若い男の姿があった。
竜に乗る男はチェイズ・マッターラ・デ・ドラゴニアと名乗った。この廃墟は彼の故国であったという。
彼の国は多くの竜を駆り近隣諸国を君臨していたそうだが、十数年前に宰相のダンジョー・ショーツ・ユイが多くの竜を奪って反乱を起こし滅びたそうだ。
第三皇子であったチェイズは忠義の竜騎士に救出され、皇国に伝わる竜戦士の秘伝を習得。亡国の仇を討つ前に墓参りにこの地に立ち寄ったそうだ。
『なにそのファンタジーの主人公みたいな生い立ちは。しかもイケメン』何か釈然としないモヤモヤを感じたが、智史は『自分とは違う世界の人間』と割り切り、ダメ元で近くの街まで連れていってもらえないかと頼んだ。
チェイズはそんな智史のお願いを二つ返事で聞き入れてくれた。代償は「探す仇のダンジョーを見つけたら連絡してくれればいい」とだけ。「少し古いが」とダンジョーの写真とアドレスを交換し、智史はチェイズの乗る竜の背に乗せてもらった。
「本当に近くの街まででいいのかい?」
「ええ、好意に甘える訳ですし、無茶は頼めませんから」
遠慮しているようだが、智史にとってはどこでも同じだけである。それと竜に長時間乗るのが怖かったのだ。
「この近くだとモキータだな。あそこは今、街の規模が大きくなっていっているから活気があるよ」
活気があるなら仕事にあぶれる事も無いかと智史は少し安堵した。
チートも無い、魔力も無い、頼るは己の五体のみ。
未知の世界で智史の冒険がいま始まる。
次回は入力が終わり次第投稿します。
でも、スマホからの投稿なので、これだけ打つのに2時間かかりました。頑張ってモキータ編は連日投稿したいと思いますのでよろしく。




