日向薫は狂ってる
俺達は全員日向主任の指名によって集まり捜査一課に来た。
つまり全員初めましてなわけだ。
新人刑事からベテランまでメンバーも様々の日向班で俺が一番びっくりしたのは“主任”だった。
偽っているのではないかとすら思っていたがやはり若い。若すぎる。これほどの若さでどうやって主任まで上り詰めたのだろうか?不思議で仕方がない。
全員が揃い主任の方を向く。
「まず初めに自己紹介をしようか」
というわけで自己紹介をすることになった。
「まず、あたしは日向薫。これからみんなよろしくね。」
拍手が上がる。黒髪ロングの日向主任は堂々としていて短いスカートから見える足はとても綺麗だ。
「えっと…俺は……」
【東京都新宿区殺人事件発生の模様、日向班は至急現場へと急行してください】
自己紹介は後にし俺達は早速現場へと向かった。
小さなアパートの一室。
「…何すかこの部屋……。」
部屋は生臭く壁や床には多数の血痕。足元には果物ナイフ、電動ノコギリ、手錠、鞭などの道具が散乱している。
新人刑事には少し刺激が強いのかもしれない。とはいえ刑事歴10年の俺でもさすがに引いてしまうほどの部屋だ。
「確かにこれは酷いですね。」
全員がその場でその光景に息を呑む。
すると目の前にに立っていた主任が突然膝をつき倒れた。
「どうしました!?大丈夫ですか!?」
幾ら主任とはいえまだまだ若い。この現場は刺激が強すぎたのだろうか。
「立てますか?外に出ましょう!」
顔を覗き込むと心配する俺とは裏腹に主任の顔は元気そうだ。それどころかなぜか興奮しているように見える。
「何を言っているんだい俺くん!!!!!」
「え?俺くん?」
何故かやっぱり主任は興奮している。
「こんなに素敵な現場はめったにないぞ!!見よ!この壁の血痕!床の道具!きっと被害者はナイフで体を切り刻まれ、電動ノコギリで体を切り落とされ、もがき苦しみ大量出血によって死んだんだろう!こんな素敵な殺人はなかなか無いぞ!いい!!すごくいい!!はぁ…♡あたしもこんな人に……殺されたい♡♡」
この場にいる全員が息を呑んだ。
快楽殺人犯よりもよほど怖い。新人なら吐いてしまうような恐ろしくグロデスクな現場を見て自分も殺されたいと思うような人がこれから俺達の主任になるのだと思うと恐怖を覚えた。
狂っている。日向主任はどうしようもなく狂っていた。