二話
ふと目が覚めた。
だが、どういう訳か目が開かない。
それどころかまともに体が動かない。
かすかに聞こえるのは心臓が脈打つ音だけ。
少々頭は回らないが、気絶する直前のことははっきり覚えていた。
おそらく俺は死んだのだろう。
体が思うように行かないのは、体が無いからにちがいない。
しかし、ここは一体どこだろう。
天国だろうか、それとも地獄だろうか。
まあ、こんなに暗くて、心音が聞こえるなんて地獄以外あり得ないだろう。
しかも、かなり趣味の悪い地獄だ。
けど、どこか落ち着く空間でもあった。
暗くて、暖かくて、規則正しい心音は、まるで母の胎内に戻ったようだ。
また微睡みかけたその時、
『···~~~~?··~~!~~~···』
ふぁっ!?な、なんだ今の声!?
ついに地獄の鬼が俺を懲らしめにきたのか!?
は、早く逃げねば!
と、半ばパニック状態になりながら必死に体を動かすと、
『··~~~~~!!~~~~!~~!··~~!』
と、先程より大きな声が聞こえた。
さらに、声に合わせて激しく揺れるオプション付きだ。
すでに俺の頭は恐怖で埋め尽くされていた。
一心不乱に体を動かそうと、いつの間にかはっきりと感じることができるようになった手足に力をいれて、
『··~~シルヴィア~。···~』
ふとその名を聞き、一瞬で意識が落ち着いた。
何故かはわからない。
ただ、ここは、やはり母の中だと、静かに思った。
落ち着いてみると、さっきまで暴れていたせいか、とたんに眠くなった。
そして、俺はそのまま意識を落とした───────。