一話
初回なので連投
それは数時間前の事─────
いつも通りの駅。
人が多く雑多な喧騒に溢れていた。
いつも通りの駅で、いつも通りに切符を買い、いつも通りに電車で帰宅する。
ただ、この日特別だった事と言ったら、普段と比べて早く仕事が終わった事だろう。
昨日の内に資料を作っておいた上に、同僚からのヘルプコールを華麗に別の同僚に受け流して、約2週間振りに定時で帰ることに成功したのだ。
受け流し先の同僚に睨まれてまで定時で帰ったのは、今日が俺の誕生日だからだ。
今朝家族から、『お前の誕生日会をするから、帰りにうちに寄りなさい』とメールが来たのだ。
うちの家族は区切りの歳は盛大に祝うという家族ルールがある。
今回の場合は、祝·四十歳である。
そんなわけで俺は今日、いつもより一時間近く早い電車に乗っている。
しかも運良く、座席に座ることもできた。
こうして座席に座っていると、普段は苦痛しか感じない電車の揺れが、ゆりかごのように感じられた。
このまま眠ってしまおうと、瞼をとじた。
だが、俺は眠ることが出来なかった。
突然、浮遊感を感じた。
驚いて目を開くと、さっきまでいたはずの乗客が、自分以外居なかった。
そしてその先、窓の外に見えた町は─────
─────ミニチュアのように小さかった。
落ちている。
直感的に理解した。
だが、そこから先が考えられない。
何故?何処?いや、どうやって?
疑問だけが空回りする。
そうしているうちにも、どんどん町は近付いてくる。
助けを、だれに?でも、──はやく、だめだ、
──このままじゃ、────死───────。
今日は眠れなかった。だけど、気絶することはできたらしい。