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All blood  作者: GUILTY
第一章
13/14

十二話

 気がつくと街にいた。

 見慣れた街並みだ。


 人は多いけれど、聞こえてくるのは自分の足音だけ。

 まだ日が射す中、不思議と暑さは感じず、母の温もりに包まれるような優しい感覚があった。

 コンクリートや、石のタイルに足音を響かせつつ、ただ、街を歩いていく。


 右に見えるのは、子供の頃よく遊んだ公園か。

 どこか見覚えのある子供達がサッカーをしている。

 自分もよく友達に誘われて遊んでいた。

 とても懐かしい思い出だ。

 もう、その頃の友達の顔は全く思い出せない。

 いや、一人だけ、初恋の人だけは、覚えている。

 長い黒髪を後ろで纏めた、儚げな印象のある子だった。

 でも、笑顔がとてもかわいらしい子だった。

 仲良くなるために何度も話しかけてたら、向こうからも話しかけてくれるようになった時はすごく嬉しかった。

 多分小学校生活の中では、男子の友達よりも一緒に居た時間が長かった気がする。

 結局、違う中学校に進むことになって告白すらできなかったのだが。

 懐かしい思い出だ。


 しばらく進むと、今度は大きな図書館が見えてきた。

 中学に入りたての頃、友達が作れずに、よくここにこもっていた記憶がある。

 確かその頃に、魔法や異世界に憧れを持ち始めたのだったか。

 歴史書や参考書みたいな堅苦しい物の中に何故か置いてあった古いオカルティックな本に興味を持ったのが始まりだったと思う。

 家でも、その本に倣って魔方陣を描いたり、それっぽい物を粘土で作ったりして飾っていたら、いつしか自分には特別な力があると思い込むようになっていった。

 学校でも自分の事を『堕天ノ使徒』とか言って憚らなかった。

 痛い、痛すぎる記憶だ。


 またしばらく進むと、今度は自分が通っていた高校が見えてきた。

 苦い記憶が溢れるほどに湧いてくる。

 この頃はクラスから完全に浮いていた。

 群れずにいる自分を格好いいと思っていた記憶がある。

 今思えば、自分の為に話し掛けてくれていた人も沢山いた。

 最後は呆れられて誰も話し掛けて来なくなったが、いじめや嫌がらせが全く無かった辺り、自分はとても恵まれていたのだろう。

 当時はそんなこと、全く理解していなかったが。

 自分の力に恐れ慄いていると思っていたのだろう。

 今になっては滑稽な話だ。

 三年生になってようやく恥に気がついたが、とっくの昔に手遅れで、自分の武勇伝(黒歴史)は全校に広まっていた。

 今さらクラスに馴染めるはずもなく、卒業するまでの友達は正真正銘0人だった。


 この頃の一番の思い出は、両親に何度も土下座したことだろう。

 これまでの親不孝への謝罪の土下座。

 そんな自分に飯を作ってくれていた事への感謝の土下座。

 そして、大学に進ませてくれという、懇願の土下座。

 母は語るでもなく、ただ『信じてた』と、一言。

 笑って許してくれた両親に、もう一度感謝の土下座。

 進学を許してくれた両親には、今でも感謝が尽きない。

 それから俺は、必死に勉強して、中の下程度ではあったが、公立の大学に入学した。

 大きなハンデを抱えつつ、経済を中心に、他の人の十倍努力をして、なんとか留年もせずに卒業した。

 そして俺は、たいして大きくもない二流企業に就職したのだ。


 気がつくと目の前には、四十年間見てきた実家があった。

 扉を開けて入ってみる。

 リビングから両親の声が聞こえる。

 ドアの曇りガラスに写る影を見ると、どうも二人だけのようだ。


 リビングへ一歩進む度、辺りは光に包まれていく。

 でもその感覚は暖かくて、心地良い。

 辺りはどんどん白くなっていく。

 リビングのドアノブを掴む頃には、ほとんど周りは見えなくなっていた。


 それでも俺は、両親に会うためにドアを開けて───...



◆◇◆◇◆



 暖かい日差しで目が覚めた。

 とても長い夢を見た。

 まさか、前世の夢を見るなんて思ってもみなかった。

 もしかして、自分は自分で思ってるよりも、前世に未練があるのだろうか。

 今までは異世界という物に気を取られ、前世のことを意識していなかった。

 果たして自分はそんなにも薄情だっただろうか?


 そう思いつつも、腹は減った。

 考えてもしょうがないので、昨日のうちに持ってきておいた林檎(?)を食べる事にした。

 今の俺は、服すら着れてない状態だ。

 あまり考えてる余裕は無い。

 ...なんだか、生まれ変わってからの俺は、妙に冷めてるというか、さっぱりし過ぎている気がする。

 まぁ、いいか。別に困ることじゃないし。



~十分後~



 さて、朝飯も食べたし、早速文字の解読に取りかかろう。

 と、思ったけど、さっき朝飯(林檎一個)を食べたせいで、ここにはもう食べ物が無い。

 昼に食糧庫へ飯を取りに行って解読作業を途中で中断するのはなんか嫌だから、先に昼と、ついでに夜の分の飯を取ってこよう。

 今度は林檎以外にしようかな。



◆◇◆◇◆



 この建物は、書庫と食糧庫の、ちょうど中間辺りに玉座の間がある。

 今俺はその玉座の間まで来ている。

 玉座の間に来るのは、探索してた時と、帰ってくるときを含めて三回目だ。

 昨日はあまり余裕が無かったり、日が落ちかけて影になっていたりしてあまりよく見てなかったが、目を凝らすと、細部には精緻な模様が彫られていた。

 近付いてよく見てみると、花や鳥など、華美というよりは、洗練された美しさのある造りになっていた。

 背面の一部をよく見てみると、文字らしきものが掘り込まれている場所があった。

 規則正しく、縦に書かれていて、全部で14行あり、その左側はまだ何も掘り込まれていない空白がある。


 おそらくだが、この文字は人の名前だろう。

 玉座に書かれていることを考えると、多分玉座に座した当主の名が、ここに刻まれるのだろう。

 まあ、勘だけど。


 文字を解読すれば何が書いてあるのかわかるようになるだろう。

 やっぱり文字の解読は急務だな、さっさと飯を取って来て作業に取り掛かろう。

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