プロローグ
やあ、突然だが、君は子供の時の夢を覚えているかい?
サッカー選手になりたいとか、お金持ちになりたいとか、中には神様になりたいと言った人もいるだろう。
そんな壮大な夢を語れるのは子供の特権だ。
時は西暦2043年、数年単位で科学のレベルが跳ね上がる時代だ。
科学が進んだ世界では神様等信じられることも少なくなり、合格祈願に神社に行くならその時間で勉強しろなんて言うことは少なく無くなってきている。
そんな世界でも、いや、だからこそ、現実逃避の為の娯楽はそれなりにある。
数年前までは創作物の中のものであったフルダイブ型VRゲームやARゲーム。
脚力を強化する靴からタ●コプターまで色々ある。
だが、やはりというか、VRゲームの人気はダントツで高い。
人間、異世界というものには憧れを抱くのだ。
かく言う俺も、異世界物は大好きだ。
それはもう好きすぎて、魔方陣の刻まれた黒いローブを着て中学校に通っていたぐらいだ。
そう、俺の夢は異世界に行くことだった。
思い通りに行かない現実に嫌気がさした俺は異世界物にどっぷりはまった。
中二の夏である。
あの頃書いたノートは押し入れの奥に大切にしまっている。
だが、やはりと言うべきか、純真無垢な子供は社会という現実に打ちのめされた。
あり得ない事はあり得ないと学んだのだ。
だが、異世界に魅入られた者の業は深かった。
高校に入り、内なる才能を開花させんと色々な事に手を出し始めたのだ。
結果、全てが中途半端になってしまった。
さらに、自分にはスポーツ全般と、歴史以外の教科に才能が無い事までわかってしまった。
そんな俺も、親に土下座して大学に入れてもらい、なんとか二流企業に就職して(幸い料理などの家事はそれなりにできたので)一人立ちすることができた。
さて、そろそろ何故俺こと現実を知った社畜がこんな事を言っているのか気になっていることだろう。
答えは単純だ。
あり得ない事が起きているのだ。
具体的に言うと、
俺、今胎児なんだよね。
ちなみに大体作者の体験談です。