「ガイツVS3つの仮面――①」
(……行ったか。ようやく動けるな)
ガイツは鼻でため息を吐き、改めて眼前の三人を
「っ!」
――見た時には既に、左右の二人が消えていた。
背後に引っ張られる両腕。
磔にされる如く拘束された両腕にかかるのは、二人の黒装束が握るワイヤーの圧。
眼前で暗器を振りかぶる中央の一人。
(得物は邪魔だな)
右手の大剣を手放し膝から崩れ落ちる。
単に腕をまたいでいるだけのワイヤーからはそれで脱することができる。
と同時に、迫っていた暗器を紙一重で避ける。
故に気付き遅れた。
暗器に隠されるようにして迫り、今まさに暗器の背後、自分の眼前で炸裂しようとしている手投げ弾に。
(こんな武器を――!)
風。
直後爆音。
「!」
肌を焦がした熱風はしかしガイツに届くことなく、その場を飛び退いた中央の一人へと吹き返す。
ガイツは無詠唱の風神の歩みにより爆風と砕けた弾体の鉄片を防ぎ、同時に空中へと躍り出て、
両腕を斬り落とさんと背後に迫った二剣を、腕を上げたローブの袖で難なく受け止めた。
『!?』
(魔装具ではない武器も扱う、か)
そのまま逆手に剣の刃をつかみ、力任せに折ると同時に脇下から背後へ突き刺す。
手応えはない。
二人の黒装束は既に地上の一人と合わせ、三人でガイツの周囲を高速で飛びまわっていた。
(瞬転空を使いこなせている。魔力への心得もある)
先程感じた魔波の気配。
三方向から投擲される手榴弾。
同時に向かってくる暗器は視認できるだけで六。
(――これは躱し切れん)
故に。
ガイツは、その場から消えた。
『!!?』
爆ぜる爆弾。
交差する暗器。
それらはガイツに触れることすらないまま、いくつかの鉄片は黒装束自身に向かい――彼らはそれを装束から自動発生した赤紫の閃光を放つ六角形の障壁で難なく防ぎ着地する。
拳を振りかぶったガイツが黒装束の背後に現れたのはその時だった。
『!ッ――――』
「まずは一人」
剛力をまとった拳は真っ直ぐに、互い向かい合う黒装束の後頭部へ吸い込まれ、
噴流。
「っ!!?」
魔波の光が飛び爆ぜる噴流を吐く足が。
ガイツの狙った黒装束が放った蹴りが、その拳と激突した。




