「関与の確証」
「動けない可能性など……いや」
「一つありますわね。国外の技術――つまりバジラノ、またはアッカス帝国の新魔術、あるいは新兵器である可能性」
イミアの言にガイツがうなずく。
「軍事国家バジラノは昔から、飛びぬけた魔装産業の技術で食いつないでいるようなものだ。実際、アッカスに国としての形を認めてもらっているのも、それによるところが大きい。十分あり得る話だ――この戦いに本当に加担しているのなら、」
「加担している」
ペトラの言葉を食うように、ガイツが言う。
一瞬の間を置き、ペトラはある確信をもって口を開いた。
「……ガイツ。そういえばお前、一体何と戦ってそうなった?」
イミアが目線を下げる。
ガイツの姿――彼がまとっていた藍色のアルクスのローブは、見るも無残に破れ乱れ、もはやほぼ衣服としての、そして鎧としての機能をなしていない。
ペトラが言外に言い含めた事柄に応ずるように、ガイツはうなずいた。
「――奴らは、黒装束を着た三人組だった――……」
◆ ◆
「――合図だ!」
「ひっ……!」
空に炸裂する極彩色の火花を認めたガイツの怒号に、マリスタ・アルテアスは体をビクリとさせてすっかり頭が真っ白になり――周囲の味方がどのように動くかと首をあちこちへ巡らせた。
陽動部隊として共にやってきていたアルクス、義勇兵コースの者達が、一様に攻撃の手を止めて引き上げ始める。
マリスタもそれに倣おうと元来た道をを振り返った――時、視界の端に、土煙の舞う中に一人立ち残るガイツの姿が見えた。
「へ――」
兵士長、と動かそうとした口が止まる。
ガイツはただ立ち尽くしているのではない。
数メートル離れたところで積み重なった瓦礫の上に立ち並ぶ、三人の黒装束から目を離せず、逃げることができないのだ。
(――三対一。強そうな人たちと兵士長が三対一!!!)
「兵士ちょ――!!!」
「馬鹿がッッ」
背後から、同じく陽動班であった風紀委員のペルド・リブスがマリスタの口を塞いだ。
「っ!!? ま、丸刈りグレー風紀の人!」
「いい加減名前を覚えろッ!! ――じゃない、さっさと退くんだ! なぜわざわざ叫んで敵の注意を引くっ」
「でも兵士長がっ」
「彼は殿だっ!! 我々を逃がすために最後尾を退いてくる役割なんだッ!! あんた質問してただろうがっ」
「!! い……今がその段階なのねっ!?」
「あのな……いやいい。解ったなら退くぞっ」
背後の轟音が、マリスタの尻を叩くように響き渡る。
(……兵士長……どうか無事で……!!)
奥歯を噛みしめながら、マリスタはペルドの後に続いた。




