表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
992/1260

「大兄さん」

 学生の包囲網を破るようにして姿を見せたのは――体の線に沿ったようなタイトな軽鎧けいがいの青年。

 その男にヴィエルナは、



「――――大兄おおにいさんッ!!?」



 滅多に崩さない表情を驚きに染め、青年に駆け寄った。



〝おうキース。確かあんた、上二人の兄貴が王国につかえてるんだったな〟


〝うん。一人は騎士、してるから。もう一人は王宮魔術師おうきゅうまじゅつし



 そういえばそんなことを言っていた。

 大兄さん……ということは、あれは長男の方か。



 ……待て。

 あの姿は――



「お前、まだケガは治り切ってないはずだろう。どうしてこんな危険な所に」

「何かしたかったの、私も。国の為。なくなってからじゃ、遅いから」

「ヴィエルナ」

「? ああ、ケイ。こっち、私の兄さん」

「ん?……ああ! もしかして君がケイ・アマセ君なのか?」

「……伝え聞いてるのか。ヴィエルナから」

「ああ。あのナイセスト・ティアルバーを倒した者に、こんなに早く会えるとはね。おっと、自己紹介が遅れたね。私はアティラス・キース。ヘヴンゼル騎士団に所属している。妹が何かと世話になっているね」

「いや。特に世話はしてない」

「悪いね。こんな時じゃなければ、家にでも招いて色々聞かせて欲しいところなんだが」



 アティラスが苦笑する。

 その人懐ひとなつこい苦笑からは人の良さがにじみ出ていて、一目でその人となりがうかがえた。

 この兄にしてこの妹あり、といった感じか。

 先の王宮魔術師と違い、この男からなら話を聞けるかもしれない。



「あ、ロハザー。大兄さん」

「ん!? あれっ、キースさんじゃないスか!! なんでここにっ、」

「ははっ! 君も来てくれたのかロハザー! なんだかホッとするな」

「ん? どちら様、ヴィエルナちゃん」

「兄」

「あに? あっ?! お兄さん?!?! うっひゃ、どうもこんにちはっ!! ともだちのマリスタですっ!!」

「マリスタ――きみアルテアスのおじょうさんか!? なんてこった、君もアルクスの増援なのか!? みんなアルクスのローブだから分からなかったが……もしかして他にも、」

「ええ。アルクスとプレジアの学生との混成軍です」



 「話せる」人物であることが分かったからか、フェイリー達が揃って歩み寄ってくる。



「あなた達は……」

「アルクスのフェイリー・レットラッシュです」

「同じくゼイン・パーカー」

「イフィ・ハイマーです。お見知りおきを」

「騎士のアティラス・キースです。先程は魔術師長が大変申し訳ないことを。共闘が叶うことを願います」

「『願います』……現在、このヘヴンゼル学園の指揮しきは誰が?」

「王宮魔術師長、イミア・ルエリケです。もっとも、王女殿下がここに留まると言われるのなら、指揮権の移動もあるかもしれませんが」

「だったらなんでここに居るんだ、あんた」

「おいアマセっ! てめ初対面の年上の相手にそんな」

「いいんだよロハザー、ありがとう。それで何だったかな、アマセ君」

「あんた、どうしてヘヴンゼル学園にいるんだ。しかもそんな汚れた格好(・・・・・)で」



 ――アティラスが神妙な顔で視線を下ろす。

 そう。アティラス・キースのまとう細身の鎧は一部が砕け破れ、すっかりすすよごれていたのである。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ