「無信用の世界――②」
……弱点だったようだ。
三人が三人、揃ってばつの悪そうな顔をした。
「……そうだな。俺にしてもこいつらにしても、その時身に染みたんだよ。相手を信用し、団結することの大切さが」
「それはそれで虫のいい話だな」
「否定はできない、かな。でも……だからこそ、僕らには『厳命』が下っていた。彼らヘヴンゼル学園の者達がどんな不当を働こうとも、決して武力で訴えかけてはならない、ってね」
「そうなのか?」
ゼインと名乗った白髪のアルクスに目を向ける。
細い眉を八の字に曲げ、答えたのはイフィだった。
「ガイツとペトラ、両兵士長からのキツーいお達しだったわ。『せめて我々は、学びを生かさなければならない』って」
「……学びね」
〝私達を信じて!〟
「……いつか俺に言い放ったような、途方もない大言をまた吐いたんだろう。お前」
「ん? 誰のことだ?」
「何でもない」
「?――ともかく、俺達も今回は分断を煽らない側に立つことにした、ってことだ。彼らヘヴンゼルを信用し、共闘の可能性を――――王道で彼らに認めてもらえる可能性を探り続ける。最後まで諦めずにな」
「王道か。それ今言うと言葉通りの意味には聞こえないな」
「はは、勘違いするなよ。王族頼みばかりの作戦で行こうなんて気はさらさらない。だが理解が得られずとも、協力するためのきっかけは必要だ。それが王女ってだけさ」
……あっけらかんとしている。
しているだけに、やはり虫がいいように聞こえてしまう。
プレジア大魔法祭の折に俺を捕らえ、リシディアからの刺客だった襲撃者になんとか抗していた義勇兵コースの者達を、残らず監視の対象にしていたらしいお前達がそんなことを言えた義理か――そう言いたい気持ちに刈られる。
だが、
〝許さなくっていい。でもどこかで踏ん切りつけて耐えなきゃいけないでしょ〟
だが、どこかでケリをつけて前には進まないといけない。
アルクスらのこの態度は、見る者によっては偉そうにさえ見えてしまうだろうが……では彼らの償いはどこで終わるのかと言えば、それは彼らにしか決められまい。
不当でこそあれ、違法ではない以上、法が彼らを裁けるわけではないのだから。
だが、聞きたいことをはぐらかされている気もする。
「……それで? その王道で以て殺されかけるような恨みを、アルクスは国から買っているのか? 国家主義者がどうこうというような事情だけで、こうも全体から嫌われるとも思えないが」
「……一つの原因は、あの『演説』だろうね」
顎に指をあて、ゼインが言う。
あの演説……敵の頭目らしきシルクハットの男が仰々しく煽動してみせた、あの映像か。




