「Interlude―14」
「何を勘違いしてやがるんだか。このプレジア魔法魔術学校は、とっくにそんな学校になっちまってるってのによ。にしても――どの派閥にも肩入れしないお前が、今回はよく映像を提供してくれたな。コーミレイ」
少年が湿った微笑みを浮かべ、ニット帽の少女に近付く。少女は少年と目を合わせない。
「おかげで風紀を乱す輩をまた一人しょっ引けたよ……それで? やっとお前も風紀委員会に――いや、俺に味方する気になったってことでいいのかな? わざわざ俺を指名して映像を届けてくれたってことはさ。俺も今は無名だが、これから高貴なる一族を背負っていくことになる身だ。当然、そんな俺に心惹かれる女も多いが――――俺は出来ることなら、そうしてやってきた女を全て受け入れてやりたい。そう思ってる。……放課後、俺の部屋に来いよ。今以上に、もっとお前の気持ちに応えてやるぜ? コーミレイ――――いや。ナタリー」
少年が、少女の露出した大腿を粘ついた目で眺めながら、その顔を撫でさすろうとして――少女に、その手を打ち払われた。
「…………は?」
状況を飲み込めない男子生徒に、ナタリー・コーミレイは顔を上げ、にっこりと笑いかけてみせる。
「結構ですよ。そうやって何人もの女生徒に手を出しているクソ野郎など願い下げなのでっ☆――さあ、みなさん。よろしくお願いします」
「?! お、おい待てよ。お前らどういうつもりで――――」
「…………確保の命令が出てます、マトヴェイ先輩」
「……は? 俺に、確保の? ちょっと待てよ、誰の命令だよ。大体、俺は貴族の中でも高名な――」
「あなた、私の友人であるマリスタ・アルテアスに陰湿な嫌がらせをしていますよね?」
朗らかに殺意を織り交ぜた声が、マトヴェイと呼ばれた少年の耳に障る。
「な……ンなこと」
「それも貴族だ『平民』だ、ということでもなく、自分の思いに彼女が応えないから、という身勝手極まりないストーカー気質な考えの下。いやぁ怖気が立ちますねっ☆…………自分のことは棚に上げて」
「こ――コーミレイお前、まさか、」
「支配欲がお強くていらっしゃるんですねぇ、マトヴェイさんは。あんな姿の女子にあんなことをしていたなんて、きゃあえっちっ☆ というわけで、貴方の大好きな証拠は既に風紀委員長へと提供しました。あなたを確保するタイミングを、皆さん、ずっと窺っておいでだったんですよ? あなた、なかなか尻尾を出さないので。股間の尻尾は良く出す癖に」
「て――テメッ、」
「あやや? 今私に『手前』なんて口が利けるんですか? マトヴェイ・フェイルゼイン」
「……っ!!」
「そのナい頭で、今後の身の振り方をよぉく考えた方が良いですよぉ。…………二度と《・・・》私とマリスタの視界に入らないよう、精々頭を低くして生きてくださいねぇ――貴方が大して力もない家柄を鼻にかけて及んだ、全ての行為を全校に――いえ、全世界にバラされたくなければ。変態野郎」
「お前――――ッ!!!」




