「言われたい放題は、」
〝国王は傭兵組織の解体を望んでいる、と数年前に演説の場で仰っていました。そのときから、あなた達は暗に『違法集団』の誹りを受けるようになった〟
――いつか、アドリー・マーズホーンがそんなことを言っていた。
アルクスはリシディアにとって目の上のたん瘤で、度々解体を迫られるような関係だったと。
つまりは正義の要請なのだと思っていた。
異端な集団であるアルクスやプレジア、その存在を許す寛容な国家がリシディアであると。
だがこれは――
「犯罪者集団が何を対等な顔をして私達と話そうとしてるのかしら、って訊いてるのだけど。リシディアの認めない軍事力を抱えておいて何が『協力』? 何が『交戦の意思なし』なのかしら?」
〝誰に物を言ってるか解ってるのか。他国から来た『平民』の分際でさ〟
〝まったく、世話のかかる異端だぜ〟
――同じだ。あのときと。
紺碧の女の、そして奴の左右に居並ぶ学生達の目。
俺を見下し、嘲笑っていたプレジア風紀委員会の奴等とまったく同じ目をしている――――
〝何を――――――やってんのよ、風紀委員どもッ!!!!!!!〟
――――となると、次に首を突っ込んでくるのは。
「『どうか話を聞いてください』と平身低頭願い乞うのが筋というものではなくて? 見ててあげるからやってご覧。伏せ」
「――ギリート。頼む」
「アンタねぇッッ――ぎゅムぴょ!!?」
一も二も無く動いてくれたギリートが、今まさに路地から飛び出してきたマリスタのローブのフードを掴み、固い床に組み伏せ口に指二本を突っ込む。
「いやーすみませんねぇ! この子今吐いたゲボ飲み戻したところで錯乱してんですわ」
「ちょっと放してよイグニトリオくあぢゃぢゃぢゃぢゃべぺぷべろっ?!?!?!??!?」
「あーごめんね口ン中で噛まれそうだったから指先から火ィ出しちゃったポショッと」
「逆に噛むっつーの!!!!!!」
「知ってますわ。四大貴族きっての不忠者。最低最悪のデガラシ娘マリスタ・アルテアス」
「――、」
「そして、それを抑える貴方もイグニトリオの皮肉王子……先の勧誘に乗せられてホイホイやってきた裏切者共」
『!』
〝既にこの国に立てたくもない操を立てる必要性は皆無なのだと!!!――――聞こえているかね四大貴族ッッ!!!!〟
……先の勧誘。
そうか……あれはこいつらにも向けられたものだったのか。
無駄の無いことだ。
「まったく……一家は魔女狩りの元凶、その他はすべて犯罪者集団の一員、その上目先の欲に垂涎し小悪党に尻尾を振る始末……文字通り始末に負えませんわ。つくづく失望させてくれますわね。――それで? これだけの悪条件を引っ提げておきながら、私達と交渉が、共闘ができる余地があるとお思いで? 雁首揃えて馬鹿極まれり、ですわね」
「~~~~~~~!!!!」
ギリートに馬乗られた状態で憤怒の魔波を渦巻かせるマリスタ。
何故ここまで勝手に話を進められても、未だペトラは動かない?
いっそのこと、俺の判断で――
「撃ち方」
――総毛立つ程の魔波が、紺碧の女とヘヴンゼルの学生らから放たれ始める。
杖や武器の先が、取り取りの光を放ちながら外壁の向こうへ牙を剥く。
「ある程度まとまって来てくれて助かりましたわ。恐らくもう一人兵士長がいたはずですが、粗忽者の集団のこと、案外外で野垂れ死んだのかしら。――まあ、関係ないですわね。すぐに後を追わせて差し上げるのだから」
『!!!』
「兵士長!」
「ペトラちゃんっ」
「まずはあなた。精々自分達の罪を悔いながら死になさい」
――風の刃が。
ペトラの首目掛け、真っ直ぐに飛んだ。




