「Interlude―13」
少年は行き止まり――廊下の端へと追い詰められて歯噛みした。
魚を捕る熊の腕章をした風紀委員の集団から、ベージュローブを着た背の高い端正な顔立ちの少年が一歩前に出る。
「中等部四年A組カミロ・クレイテル。お前だな、貴族に対する不満を垂れ流し、『平民』共を煽動している生徒っていうのは」
「……ふざけるな。貴族クラブめ、何の証拠があってこんな」
「共謀者が吐いた。同じA組のマイレ・カラーリア……聞き覚えがねぇとは言わせないぜ? 二人だけで同じ部屋にいたくらいの仲なんだからな」
「な――待て、そんなことは」
「……分かりやすすぎるぜ、クレイテル家のお坊ちゃま。こいつを風紀委員会の名の下に拘束する。お前ら、捕縛しろ」
長い睫毛を持つ目を細めて笑い、少年が背後に控えるグリーンローブの少年少女に命じる。同じく風紀委員会の腕章をした彼らは、その目に戸惑いを浮かべながらも、呆然としたカミロ・クレイテルの両腕をそれぞれ掴み、後ろ手に拘束する。
「しょ……証拠はどこだ! 証拠を見せるまで、俺は認め――」
「あんな貴族への罵詈雑言に満ちた映像を今ここで見せろって? おいおい冗談が過ぎるぜクレイテル、俺の背後に、どんだけの数の貴族がいるか分かるだろ? あんなものを見せられたら、いくら寛容なこいつらでも黙っちゃいられねぇってもんだ。なあ、コーミレイ」
「!?」
居丈高な風紀委員の少年が、背後に立っているピンクのニット帽をかぶった少女に告げる。コーミレイと呼ばれたその少女のニコリとした顔を見て、クレイテルはいよいよ目を見開いた。
「あ……あんたは報道委員会の――!?」
「さあ。さっさと連れていけ」
「おい待て、コーミレイ、おい! あんたまさか、俺の部屋の中に記録石を仕掛けて……ふざけるなよあんた!! 私生活を盗撮するなんて外道のやることだぞ、まだ仕掛けてあるのか!? 今すぐ外せ!!」
「ホラホラ、抵抗するな。話は後でゆっくり聞いてやるからさ!」
「コーミレイ……コーミレイ!! お前、覚えていろよ。貴族なんかにつきやがって、絶対に許さ――」
「五月蠅いですねぇ。これから消えゆく羽虫の声が」
「な――」
「絶対許さない? どうぞご自由に。どれだけ怒りを募らせようと、あんな現場を撮られた以上、あなたは私に人として対等な物言いなんて一生できないと思いますよぉ。どんなものを撮られたのかは……貴方自身が一番良く解ってらっしゃると思いますが」
「くっ……! そうやってこれからも、『平民』を次々ハメていくつもりか……外道が!」
「貴族だの『平民』だの。知りませんよそんなもの。勝手にやってください。ではお達者で」
「こ……の……離せっ離せお前ら!! 学校の中でこんなことが許されていいワケが……離せえェッ!!」




