表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
974/1260

「見敵必殺」



 二辻ふたつじの風の刃は、ヒンコとワーヴローの二人が展開した魔法障壁まほうしょうへきによって受け切れられるまで――石の床材と共に、門の内側で油断しきっていた悪漢あっかんらを残らず切り裂いた。



「けけけかか……これから守ろうって街に対して随分ずいぶん手荒いな。ここぞとばかりにウサ晴らし(・・・・・)かァアルクスよぉ? 普段ないがしろにされてる分の――」

「ヒンコ」

「――あん」

海神の(ヴァダレイ・)



 風の刃に、三角形に断たれた門。

 木がきしみを上げ、ゆっくりと地に倒れた先から現れたのは――――広げた右手の上で水の魔力を圧縮しうならせる、マリスタ・アルテアスの姿。



三叉槍(リュアクス)ッ!!」



 ――風の牙が駆け抜けた痕を、水のまたが飲み込み尽くす。

 目を見開き跳躍ちょうやくした乱れ髪のヒンコと違い、スキットルから一口あおったワーヴローはほおと腹部を大きく膨張ぼうちょうさせ――口から三つ又を上回らんばかりの砂嵐を吐き出した。

 上級魔法が止められたことに目を見開くマリスタ。



「かっかァ! やるなワーヴロー――」

「お前はやれん(・・・)ようだな」

「!」



 跳躍した乱れ髪の長身。



 その正面に、翼をした大剣を振りかぶるガイツ。

 しかし、



(――遅せェよ!)



 ヒンコは笑い、ガイツが一動作もせぬううちにナイフを振りかぶる。

 黄緑に発光し高速微振動(びしんどう)を始めた持ち手の黒いナイフを、瞬転空(アラピド)で飛び一瞬でガイツの心臓を――



 ――――狙った一瞬で、その体を両断りょうだんされていた。



「う……うわああぁぁぁっっ」

「ヒンコさんがやられたァっ!!」

「馬鹿な、今あのバカでかい剣を小枝みてーに――」



 再び構え、ガイツが鬼の表情で地上に疾駆しっくする。

 狙いはワーヴロー、マリスタと拮抗きっこうする砂嵐を放つ男の脳天のうてん



「!」



 気付いたワーヴローは押しかけていたマリスタとのつばりを解き一瞬で後退、応じ放った数発の砂弾の砲手(サンドバレット)をガイツが投げた大剣に弾かれたことで生じた砂煙すなけむりに隠れ距離を取る。



 その背後から、彼は首を落とされた。



「――――――、は。はは」

「……そんな姿になっても死ねんのか。つくづく魔術師とは嫌な生き物だな。『さかみ』ワーヴロー」

「そうか……剣を投げたのは後ろを取るためだったか。取られんよう心を配ったつもりだったが……まさか風精化ふうせいかたァな」



 砂煙に溶けていたかのように、ワーヴローの背後に現れたガイツ。

 投擲とうてきし、またワーヴローの首を落とした大剣を彼は逆手に持ち、未だ自分を見上げる首だけの長髪に振りかざす。



「あの風の刃もお前か。大した手練てだれが育ったもんだ。お前は俺を知っているようだが、教えてくれねえか。最期さいごにお前の――」



 ドスリ、と。



 風をまとった切っ先は、魔術師の頭部を粉々に吹き飛ばした。



「――実力者とみられる者は始末した」



 砂煙の中、男は迅速じんそくな足取りで路地ろじの出口へと引き返す。

 数秒前に命をつぶした者のそれとは思えぬほど、堂々と淡々と。



 それがガイツ・バルトビア。

 冷酷れいこくなまでの義勇の意志で翼のような大剣を操る、アルクスの兵士長。



「家屋は出来る限り傷付けるな。その範囲内で、出来る限り派手に――――門を取り戻せ!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ガイツ強すぎ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ