「The Oath」
「違う。それは違うと私は思う。私のような、結果的に分断を煽っていた者が言えたことではないが――私達は貴族やその他、学生とアルクスという様々な分断を超えて手を取り合い、狂った悪漢の手からプレジアを、そしてリシディア王族を救い出した――――だから信じられる。我々は、いいえ私達は、きっともう一度この国を救うことができる」
ペトラが学生らの中を歩み切り――最後にマリスタの前に立つ。
神妙な顔で、マリスタが彼女の眼差しを受け止める。
横ではギリートが興味の無さそうな顔で他所を向いている。
まったく――団結を高める為とはいえ、えらくご高説を垂れるものだ。
「……さて。分断は失敗した。国民も無事。そして私達が得た最後の情報――それは、どうやらこのクーデターが成功した暁には、あの映像の男が新たなリシディアの王として君臨するつもりらしいということ…………最後に問おう。あのような男を私達の王だと認めることができるか?」
「ぜっっっっったいやだ!!!!」
……全会一致の空気の中、マリスタの叫びがやたら場違いに響き渡る。
ガイツが短く二度咳払いしてしかめ面を飛ばしたが――赤毛はそんなものには動じない。気付かない。
「あんな男に私達のリシディアを渡さない。ココウェルをこれ以上苦しめさせない!」
「!」
力無く座り込んでいたココウェルがマリスタを見る。
マリスタは朗らかに笑って手を差し出し――――ココウェルの困惑した顔に応じた。
「頑張ろう、ココウェル。一緒にリシディアを、王様を救い出そう!」
「……」
その微笑みから顔を背けながら。
ココウェルは渋々といった様子で、マリスタの手を取った。
「――では作戦と班構成を説明する。何度も説明はせん、頭に叩き込め」
「よっしゃやる気出てきた! なんでも来なさいってのよっ」
空気が再び、鋭く引き締まる。
マリスタはココウェルを引っ張り上げ、勇壮に腕を捲った。
◆ ◆
「んでなんで結局こうなんのよ!!!!」
その数分後。
マリスタは護衛にしっかり両脇を挟まれていた。
「当然だろ。あんな半ば強引に屋敷を飛び出してきといて」
「う、」
「貴様のことは既に報告を受けている、マリスタ・アルテアス。貴様が戦地で暴走せぬよう、丁重にお守りを付けさせてもらうぞ」
「これお守りじゃなくてもはや重りなんですけど?!?!」
マリスタはガイツ、サイファスと同じ班。
次々に班構成が発表され、俺は――
「部屋だけじゃなくこんなとこまで一緒だなんて。これが運命ってやつ?」
「……班構成に介入した訳じゃあるまいな、ギリート」
「そこ。無駄口を叩くな」
ギリート共に、ペトラ・ボルテールの班に組み込まれた。
「さて……作戦は大きく二つの段階に分かれる」




