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「分断」



 ココウェルの激高は、画面の向こうの激高にかき消される。



『何も生み出さず何も犠牲にせず、ただ安穏あんのんと我々の作り上げた国という富を食い潰すだけの『平民』共に対等な顔をされる時代は終わった! このノジオス・フェイルゼインが新たなリシディア王となり、この国を世界に誇る一大強国としてみせよう! ――――さて。それはそれとしてだ、貴族諸君…………我々が歩む栄光、その第一歩に。君達も加わってみたく(・・・・・・・・・・)はないか(・・・・)ァ!?』

『!!』



 ――ああ、成程。

 道理どうりで――――アルクス達がろくに映像を見ず、マリスタとギリートば(・・・・・・・・・・)かり(・・)を見ている訳か。



『我々は既にヘヴンゼル城を包囲した。事を荒立てたくないが故に武力制圧していない王城おうじょう以外はすべて我らの手に落ち、唯一の実力者であったヘヴンゼル騎士団第五騎士長、ゼガ・ラギューレも既に討ち取った! …………わかりますかな? もうリシディアは滅んだも同然なのだと!!』

「この――――!!!!!!!」

『既にこの国に立てたくもない(・・・・・・・)みさおを立てる必要性は皆無かいむなのだと!!!――――聞こえているかね四大貴族ッッ!!!!』

「!!!」

「――ふーん」



 困惑の表情を浮かべるマリスタ・アルテアス。

 何かを勘案するように目を閉じて聞いているギリート・イグニトリオ。

 そして――今しがたやって来た教師陣の中から歩み出る、シャノリア・ディノバーツ。



『集え王都に!! 集え我が元に!!! 我ら選ばれし貴族の手で以て、死にぞこないの王族の手からこの国を取り戻すのだッ!! 誇りある君達を我々は大いに歓迎する、だが手土産にィ!!――――このに及んで抵抗ていこうの意を見せる反逆者共の塩漬けの首(・・・・・)を持ってきた者には――――新国家設立のあかつきに、国の要として重用することを約束しよう。ではまたな。我らが同胞どうほう達よ』



 小男の、シルクハットの下からのぞく爛々(らんらん)とした笑顔を最後に。



 映像は途切れ、それに食い入っていたココウェルだけが――衆目の中心に取り残された。



「――――――クソ」

『!!!』

「ガイツっ、」

「ああ」

「がアァァァァァアあぁぁぁァァァッッッ!!!!!!!!!」


 ――――すんでの所で踏み砕かれ(・・・・・)かけた記録石(ディーチェ)を、ガイツが魔法で手元に引き寄せる。



「クソッッ!!! クソッッッ!!!!! クソォッッッッ!!!!!!!」



 ――――既に記録石(ディーチェ)の無い足場で、激情のままに地団駄じだんだを踏み続ける王女。

 それを止めに入ることができる者など、一人として居なかった。


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