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「まほうつかいの殺し方」



 ――腕を斬られた時の痛み。

 戦闘の高揚こうようと目の前の危機とに目を取られ、確かに痛みは印象に残っていない。



 アヤメとの戦いだけじゃない。

 ナイセストとの戦いも、テインツとの戦いも。

 大小様々な傷を負ったが、印象に残っているのはその傷の見た目の深さだけで、痛みはあまり覚えていない。



 精神、あるいは神経的な作用ばかりだと思っていたが――魔力の作用でもあったのか。



「私の傷、特別痛かったの……もしかしたら、ナイセストの所有属性(エトス)、関係してるのかもしれない」

「『闇の不活性化ふかっせいか』か……まあそうだろうな。まあそんなワケで、俺達魔法使いってのは命を絶たれにくいんだ」

「……絶つにはどうしたらいい」

「あ?」

「――――」



 ヴィエルナの目が細まったのを感じたが、構わずロハザーに問う。



「魔法使いの息の根を確実に止める方法はあるのか。どこまでやれば、或いはやられれば死ぬ?」

「そ……」

「そんなこと聞いてどうするの?」



 静かな言葉が真っ直ぐに俺を突く。

 ヴィエルナの目をしかと見据みすえ、次いでロハザーを見る。



「これから俺は初めての戦争に出向くんだぞ。敵も味方も俺も、戦場では互いに殺し殺される関係だろ。敵を確実に仕留める方法を知りたいのは当然のことだ。なにせ教本には載っていないからな」

「…………」

「…………や、これといって別に『この方法でしか殺せない』、なんて話じゃなくて、あくまで一般論だけどよ」



 俺とヴィエルナの間に何やら不穏を感じ取ったのか、どこか居心地が悪そうにぼりぼりと頭をきながら――ロハザーは言葉を続ける。



「首を落とす。神経系を破壊する。これが一番確実だ。できるかどうかはさておいて」

「神経系を破壊……」

「おう。例えば、マリスタの奴は背骨をへし折られてやがったが、あれは一歩間違うと危なかったと思うぜ。ちょっとでも魔力を込めてりゃあ、魔力回路(ゼーレ)も物理攻撃で干渉・破壊できちまうからな」

「…………」

「でも、難点は言うまでもねえよな。――――どっちもほぼ不可能(・・・・・)ってとこだ。首を落とすと言っても、魔法使いは大抵たいてい英雄の鎧(ヘロス・ラスタング)を使ってる。強化された首を断ち切るなんざ、よほど好条件がそろってないと無理だ。突き刺すのとはワケが違い過ぎるし――神経系なんてもっと難しい。肉眼で目視なんてできねえから狙いようがえからな」



〝――おかげで八度も首を落とし損ねた〟



 ……アヤメもそんなことを言っていた。



 首か、神経か。

 まるでゾンビのようだ。


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