「戦う者達」
復讐は負の行いだ。
人間が正に――光に生きることを求めてしまうつくりをしている以上、認識が変わることは無い。
闇に留まり続けるだけで、人間が徐々に正気を失うのはそのためだ。
光を浴び続けようと、人間が狂わないのはそのためだ。
〝あんたに――復讐なんてさせないっ!〟
〝だって私は――――あなたに復讐なんてして欲しくないもの〟
だから止められる。
闇に進もうとする同族を、特に深い理由は無くても止めようとする。
「…君はどう?」
「何?」
「君は。アマセケイは、他人の復讐を止められるなら――止めるかい?」
――そうか。
だから拒み続けなければならないのかもしれない。
自分を止める者を。
差し伸べられる光からの救いを、振り払い続けなければならない。
言わば税金だ。
負を成し遂げた罪人が、一生を贖罪と良心の呵責に苦しみ続けるのと同じように――負を志す者も、後ろ髪を引く正と戦い続けなければならない宿命にあるのだろう。
〝人間として生きながら復讐が成せると考えるのか〟
だからお前は復讐者ではなかったんだ、アヤメ。
「止めるよ。それが人の道を外れていたらな」
「……んん? どういう理屈それ。復讐って行いそのものがもう人の道外してるでしょ」
「違う。だって復讐は人だからこそ志すものだからだ」
「…………?」
「癇に障るって話さ。人であることを忘れることで罪の意識をから逃れようとする動物を相手にすると」
釈然としない様子のギリートを尻目に席へ着く。
教室には入ってきたばかりの頃と違い、しっかりと日が差している。
俺は光に顔を向け、心地よい眩しさに目を細めた。
◆ ◆
「……ただのイメージだけどさ。そうやって復讐をアレコレ小難しく哲学する奴って、結局復讐をなせずに終わるパターンな気がするんだよね」
ギリートの独り言に、圭が気が付くことは無かった。
◆ ◆
「――――テインツは来てないんだな」
「あいつなりにクソほど考えた上での結論だよ」
何の気なしに口を衝いた言葉に、ビージが大きな鼻息と共に応じる。
「あまり大きい声で言いたかねーが、あいつには体の悪い叔父夫婦と妹がいてよ。たとえ何があったとしても、今死ぬことだけはできねえんだ」
「……そうだったな」
「だから馬鹿にすんじゃねーぞ。あいつぁ――」
「してないよ。テインツのことも、ここに来たお前達のことも」
「…………おう」
定刻。
出席した義勇兵コースの者達はエントランスに集められ、後は指示を待つだけの身となっていた。
改めて周囲を見渡し――――戦争に参加する意志を固めた面々を眺める。




