「血の王命」
「わたしココウェル・ミファ・リシディアは、プレジアの助力によりリシディアが守られた場合――――プレジア擁する義勇兵集団『アルクス』を、国軍に準ずる立場へと引き上げると約束します」
『ッ――――!!!?』
「貴方の恐れている『違法集団との誹り』は、これで受けることはなくなります。国家の危機に働いてくれた貴方達を、わたしが守ります。地位と名誉に懸けて」
「……殿下、我々の懸念はそれだけでは――」
「解っています。プレジア襲撃の件についても、わたしの知ることは洗いざらいお話ししましょう。火急の時です、構っていられません」
「…………解っておいでなのですか? 殿下」
顔を下げたまま、オーウェンが口を開く。
床に着けられた拳が固く握られるのを見た。
これは――信用されていないな。
「恐れながら申し上げます、殿下。『王命』とは、このリシディアという国家にとって最大の形式的効力を持つ命令です――決死して軽々しい気持ちで連発していいものではありません。一度出した王命は冗談では済まないのです」
「無論です。しかしわたしは王族ではあれ王ではない身の上、信用できないのでしょう」
「そのような――」
「ですから契約を行いましょう。魂縛証文を用意します」
『な――!!?』
……ギアス・ブルーフィ?
「で――殿下。貴方は血の契約を結ぶ意味を、」
「これでプレジアの懸念は払拭されたはずですね。では改めて王命を発します、プレジア学長オーウェン・アルテアス。わたしを王都へ連れて行きなさい。そしてリシディアを守るため、プレジアの持つ出来る限りの戦力を貸しなさい。義勇兵団アルクス、それに――望みとあらばその候補生達も」
「!」
「――――」
「そ――それはお許しください殿下ッ! アルクスだけでなく義勇兵コースの学生達もだなんて」
「望んだ者のみ、と言ったはずです。それに――低学年の者はともかく、最高学年の候補生達がリシディア国軍兵にも劣らない実力者揃いであることは先の戦闘が証明していると考えます。どうかよろしくお願いします」
「殿下……!」
「…………謹んで、お受けいたします。殿下」
オーウェンが顔を上げてココウェルを仰ぎ見、再び深く頭を下げる。
「ありがとうございます」と、ココウェルも目を閉じ小さく頭を下げた。
「――では、さっそく準備に移ります。失礼させていただきます」
「お願いします。今ある戦力を最大限編成し、出発の日時等、委細が決まったら知らせてください。今度こそすぐにです。いいですね」
「……御意のままに。ボルテール兵士長、殿下に魔紙を」
「……。承知しました」
「貴様も即刻ここを去れケイ・アマセ。教室で大人しく連絡を待て」
「よい機会です、この学生には少し話があります。あなた方は準備を急いでください」
「しかし――」
「急ぎなさいッ!」
……オーウェンは、王女でなく俺を睨み付け。
ペトラと共に、扉の向こうへ消えていった。
「……おい、ココウェル…………ッ!?」




