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「Interlude―9」




◆     ◆




 真四角のテーブルと簡単な丸椅子だけがある、風紀委員会指導室。

 八畳はちじょうほどの小ぢんまりとした窓のない部屋の引き戸が開けられ、ようやくマリスタはヴィエルナから解放された。

 ヴィエルナが明かりをつけると、白い壁に反射した光がマリスタの目を刺す。

 マリスタは一度ぎゅっと目を閉じると肩をすくめ、痛みを発する肩の筋を伸ばした。



「たたた……」

「ごめんね」

「あなた、見かけによらずすんごく力強いのね。ううぐ、肩が……」

「ごめんね。でも、今度は肩、外すかも」

「追い打ちで脅迫きょうはく?!? そんなおだやかなチョーシで!!」

「……でも、よかった。元気そう……ごめんね。ロハザーとか、みんな。悪い人じゃあ、ないんだけど」



 ヴィエルナは独特なしゃべり方でそう言うと、能面のうめんを崩して顔をシュンとさせ、肩より少し高い位置で黒髪を揺らした。

 マリスタはしばらくポカンとしていたが、やがてヴィエルナが風紀委員の横暴なふるまいを謝罪しているのだと気付き、笑いながら手を振った。



「ああ――いやいや。大丈夫だよ。むしろその……ありがとう。止めてくれて。私、カーッとなっちゃうとダメだからさぁ。いっつも友達に怒られるの」

「すごく、解るんだよ。アルテアスさんの、気持ち」

「あはは、そう言ってくれるだけ救われますなぁ――――えっと。ごめん、あなた、名前は……」

「ヴィエルナ。ヴィエルナ・キース」

「ヴィエルナちゃんね。私は」

「知ってる。有名人」

「たは、そりゃ光栄――でも、ちゃんと言わせて。こういうのってさ、知ってるとか知らないとかじゃなくて、心の問題じゃない?――――私はマリスタ・アルテアス。よろしく」



 手を差し出したマリスタをポカンとした顔で見つめるヴィエルナ。

 マリスタがニカリと笑うと、釣られるように笑みを返し、その手を取った。

 きゅ、と優しい圧がマリスタの手に伝わる。



「じゃあ捕縛ほばくしたので、聴取ちょうしゅ、行います」

「それはしっかりやるんだ……」

「成績に響きます」

「え?!?!」

「ふふ……冗談。実際に手、出してないし。口頭注意で、終わり」

「あ、よかった……この上生活態度まで評価悪かったら、実家に連れ戻されるところだよ」



 ヒヤヒヤ、と口で言いながら汗をぬぐうふりをしてみせるマリスタ。

 ヴィエルナは三度みたび笑い、マリスタと共に丸椅子に腰を下ろした。



「改めて。ごめんね、今日は。ちょっと前から、みんな。ピリピリしてて」

「うん、私も同じクラスだし、なんとなく感じてた。テインツ君のことが原因でしょ?」

「知ってる?」

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