「プレジアの目的」
「く……国を滅ぼしてでもプレジアを守る、だぁ……!? 国あっての学校ってことさえ解んねえのかお前ら――」
「やかましいぞ穀潰し、安全な場所からキャンキャン吠えるだけの犬めが。そして『国あっての学校』だと? 馬鹿も休み休み言うんだな。プレジアが生き残るために必要なのは人であって国ではない」
「んだと……!?」
「この学校は、無限の内乱の直後に設立されました。ケネディ先生」
サイファスの控えめな目が、ファレンガスを捉える。
「……また『設立』の話か? それが一体何の関係があるってんだ」
「疑問に思ったことはありませんか? そんな歴史の浅い教育機関に、どうして現存する四大貴族全てが所属し、あまつさえ運営にまで関与していたのか」
「……! ちょっと待てよおい、まさか最初から……」
「やっと思い至ったか無能め。そうだ。無限の内乱を経て、四大貴族はとっくにリシディアを見限っていた。このプレジアは言うなれば、一種の独立国として機能してるんだよ」
「アルクスの正当性が崩れますッッ!」
悲痛ともとれる叫びはシャノリアのもの。
他の者の色めく視線が集まる中、もはやオーウェンは彼女に見向きもしない。
「額面通りにしか物事を測れん小娘はもう黙っていろ。邪魔だ」
「アルクスはっ、今王国に必要な義勇兵集団として認めてもらおうとしている最中なのですよ!? なのにこのプレジアが、今学長が言った通りの目的で建てられていたのだとしたら……アルクスは、いち組織の持つただの軍事力ということになってしまうじゃないですか!」
「そして矛先を向ける場所さえ見当違い、か。まったく無能も甚だしい―設立者は誰だ?」
「え?……」
「このプレジアを、何らかの目的で設立、広く学生を集め、その何割かで軍事組織アルクスを作り上げようと最初に画策したのは――――最初の学長は誰だ?」
「――ぁ」
「答えてみろッ!!!」
トドメとばかりにオーウェンが怒鳴る。
自分に目を向けてもいない白髪まじりの長身の男から、しかしシャノリアは目を離せない。
「……クリクター・オース学長が……その目的でプレジアを作り上げた?」
「そうしてそこで呆けていろ、若造が。まだリシディアを見捨てると決定したわけでもないというのに喚き散らしおって」
「……成程な。報復を恐れてのこと、ってワケか。アッカスからの」
「……ほう」
オーウェンがファレンガスに目を向ける。
「ようやく理解したか。穀潰し」




