「凶報」
「!!」
――その言葉に、即座に反応できた人間は少なかった。
「王都が攻撃を受けている」。
「…………お、」
その単純な言葉の意味を。
「……王都が……」
眼前の、血濡れの兵士の意味を。
「攻撃を受けてる、って……」
王都が今、どういう事態に陥っているのかを――――ほとんど誰も理解できなかったのである。
「――――軍がいねえ王都が攻撃されてるってのか!!!? どこのどいつにだッッ!!」
「ゼイン! 校内のアルクスをすべて集めろッ!!」
「了解」
「ペトラ! 学長に――」
『もう向かってる! 学長を連れてそこに向かう、場所変わったら教えて!』
「イフィ! 守衛のメンバーにプレジアの入り口を閉じさせろ」
「分かった!」
「フェイリー!」
『聞こえてるぞ! どうするっ』
「すぐに風紀委員長、生徒会長に連絡を取れ! 学生らと年少クラスをそれぞれの教室に戻した後点呼させろ」
「分かった!」
「ファレンガス・ケネディ、」
「ど――どんな状況なんだ今ッ、王都はっ。お、俺の女房と子どもが――」
「ケネディ先生ッ!!」
「っ……!! が、ガイツ、」
「……しっかりしてくれよ。あんたがそんなでどうする!」
「っぁ……っ、悪りぃ。取り乱した」
「教職員への連絡を頼む。各担当教室の児童学生らの人数確認をした後、学長の判断があるまで職員室で待機を」
「おう!」
駆けだすファレンガス。
ガイツはファレンガスに代わり、肩で息をする兵士の前にかがみこんだ。
「まだ話せそうか?」
「敵は……敵がどこから現れたのか分からない。気が付いたときには、王都の中心部に」
「…………」
――兵士が正気を失いつつあることは、ガイツにも容易に察せた。
と同時に兵士へ魔力知覚を巡らせてみるも、やはり魔術起動の兆候は無い。
兵士はうわごとのように続ける。
「治安部隊が……残された騎士が……第五騎士団が、鎮圧に当たった」
「第五騎士団が? 王都内に残っていたのか? 他には?」
「第五騎士団だけが残っていた……それで十分だと思われた……」
「敵の規模は? 人数は?」
「多くない……決して……だが騎士団は…………第五隊は……!!!」
「!!? ま、まさか――負けたのか? ヘヴンゼル騎士団の騎士長が?」
「悪夢だ……悪夢だった…………何が起こったか解らない…………やつは、アレは――――あれが、急に戦場をメチャクチャにして、」
「何の話だ? あれとは何だ? いや――――騎士長は。第五騎士長、ゼガ・ラギューレ殿は生きておられるのか!」
「ゼガ…………ゼガ様は………………」
兵士が目を見開き、ガイツのローブの袖をつかむ。
「悪夢だ……あれは……あいつの手には………………ゼガ様の首が握られていた!!!!」




