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「おもい、わずらい」



〝――例えば、リシディア国内に魔女がいたとすれば。その存在が明るみになった場合……二十年後の現在、どういう処置がとられるのでしょうか〟



 圭がプレジアへとやってきて最初の授業。

 マリスタは、そこで彼が教師へ向けた質問にまゆをひそめた自分をはっきり覚えていた。



 魔女まじょ

 リシディア国内に、太古の昔から存在した一族。



 だというのに、マリスタは魔女についてほとんど何も知らない。

 否、それは彼女に限った話ではなく――



(――同じ国にいたってのに。プレジアの図書館にも、王都の大きな図書館とかにも。魔女に関する本とか、ほとんど無かった気がするのよね。っていうか、むしろ)



 魔女に関する本や、マリスタ自身が関わった出来事と言えば――ほぼすべて、魔女を悪として扱うものばかり。

 そして史実でも、魔女は悪役――――昔からずっとリシディアとは戦争状態にあり、ついに二十年前、完全に決裂した。



 「無限むげん内乱ないらん」。



当時の魔女王まじょおう、タビア・メザーコードが、リシディア第一王女ヴィリカティヒ・セラ・リシディアを和平会談の檀上だんじょうで殺害。

「痛みの呪い」が国中に跋扈ばっこし、更に魔女の軍勢と内通したアッカス・バジラノ連合軍による謎の大量破壊兵器(・・・・・・・・)も相まって、国の軍事力は九割が壊滅。



創設されたばかりだったヘヴンゼル騎士団きしだんも、生き残った騎士長きしちょうはたったの二人。

当時の国王、王子も戦乱の中で死亡し、後を追うように王妃おうひも亡くなった。



「魔女はリシディアを一度滅ぼした(・・・・・・)」――――憎々しげにそう吐き捨てた大人たちを、マリスタも何度も目にしていた。



(リシディアを滅亡寸前に追いやった魔女の一族……ケイはそんな人達とつながってるっていうの? 何のために? もしかして操られてたりしてる?…………いや。でも、)



〝俺は二度と逃げない。二度と諦めない。家族の命を奪った者を影も残さずなぶり殺しつぶし尽くすまで。例えこの身がどんなにむごたらしく醜悪しゅうあくに破滅しようともだ〟


〝全部無くした俺に、何も求めんなッ!!!!〟


〝途方もない数の人間をあんたの異世界に勝手に巻き込んで苦しめて、それがそんなもんで清算出来るワケがねェだろうがッッッ!!!!!〟



(……あれは、全部本気の言葉だった。操られてたりする人の口から出る言葉じゃ、絶対ないと思う。そんな証明になる言葉なんて、他にもたくさん言ってた。キツいところも、優しいところも――)



〝足りない、足りないよ……ケイくん……!〟



「っっっ…………!!!!」

「マリスタ? どうしました?」


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