表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
919/1260

「あらそいのはてに」



「……まあいい。後はお前達でどうにでもしてくれ」

「…………ん? どういう意味?」

「そのままの意味だ。お前達と違って、こっちは一介の学生風情に過ぎん。後はこの世界の勝手知ったるお前達の方が上手くやれるだろう」

「……話させて欲しそうに聞こえるけど。王女様と」

「耳掃除はこまめにやることだ、大貴族」

「ふーん、そっか残念。合わせてあげようと思ったんだけどなぁ~。・・・………………」

「こっちの様子をうかがうな。いくら待ってもご期待の反応は返ってこんぞ」

「で、でもケイ。ちょっとは気になるでしょ?」



 マリスタが目の笑わない小さな笑みを浮かべて聞いてくる。

 その目がたたえるのは、



〝無言で背ェ向けて去るって、ナニソレ? カッコいいつもり?〟



いつか(・・・)、小さな男の子のために俺の胸倉をつかみ上げた時と同じ光。



「……本気で言ってるのか。マリスタ・アルテアス」

「え?」

クソが付くほどお人好しだな、お前は。死にかけたお前を見て笑っていた畜生ちくしょうに俺が、いやさ――まともな(・・・・)人間が情けをかけると本気で思ってるのか?」

「! あ、いや。それは――」

「ハッ、一番マトモでない狂った鬼畜きちくが何を知った風に偉そうな戯言ざれごとをベラベラと――」

太鼓たいこちが口をはさむな鬱陶うっとうしい。お前には話してない」

「お、おいおいおいアマセ。コーミレイやめろ」

「私がお前に話してんですよ目の掃除はこまめにやることですね害悪さんっ☆手前てめえ心の機微(センチメンタル)に他人巻き込んでいたずらに傷付けるなっつってるのが解んねーんですかって何遍なんべん言わせんですか編入してきた当初から。何一つ進歩しないんですね貴方ホントに気持ち悪い」

「ナタリー……!!!」

「口を出すなパールゥ。……お嬢様(・・・)のこととなると必死だな、鼻血でも出そうだぞ? 他人ひとの会話に一から十まで茶々(ちゃちゃ)入れやがって、一生やってろ金魚のふん目障めざわりだから失せろ。まさか病人にここを出て行けとは言わんだろうな?」

「…………生きて医務室を出られるか心配した方がいいですよ、外道さん☆ マリスタ行きましょう」

「い、いやちょちょちょ。勝手に盛り上がったテンションに勝手に私を巻き込まないでよナタリー」

「う、!?………………ご。ごめんなさい」



 図星を突かれ、どもったナタリーが素直に頭を下げる。

 いい気味だ、誰か写真を撮れ。高く売れるぞ。



「ケイも落ち着いて。なんでそんなに怒ってるのか私(わか)んないよ」

「解る必要はない。俺もお前を理解しない。あの暗君あんくんに同情するなら好きにしろ、お前のお人好しには付き合ってられない」

「もー、そうやってすぐシャットアウトするんだから……けどまぁ、今はいいわ。また後で話す。今はみんないるし、これ以上ゴタゴタしたくないから――ヴィエルナちゃんりんごちょーだい、あーん」

「あ。あーん」

「………………」



 ……目に映る限り、呆気あっけに取られていたのは俺だけじゃなかったと思う。

 マリスタは何ら気持ちを乱した様子もなく、ヴィエルナのリンゴを頬張り続けている。



 思う所を、一旦秘める。

 マリスタ……こいつ、そんなことが出来る奴だったか。



(……成長って奴だわね)

(アルクスとかお父さんとか、衝突しまくってたもんね。一皮ムケたってやつよ。なんだかちょっとさびしい気持ち。お母さんとしては)

(システィーナマリスタの母ちゃんだったのかー?)

(あんたは大人しくリンゴ食ってなパフィラ)

(むぎょむぎょ)

「でもほんと、あれだけウルサかったのがこんだけ静かだと生きてるのか心配になるわ。私、たまにアルクスの詰所とか通るんだけど。そこにいるんだよね、イグニトリオ君」

「そうだよ。すっかり憔悴しょうすいしちゃってる感じ。食も細いんだよなぁー、毎回食べ残してるしさ」

「……あのさ。尋問じんもんとかで疲れさせてるとかじゃないよね」

「とんでもない、この国のお姫君サマ(・・・・・)だよ? 新入生より手厚くもてなしてるさ……あれはたぶん、今の環境のせいというよりも、」

「いうよりも?」

「ショックを引きずってる……って感じだけどね、見てると。唯一そばに置いてた護衛ごえいの騎士に、裏切られたってショックをさ」




◆    ◆




「……やはり、食は進みませんか。殿下でんか


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ