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「和解、ここでかい」

「私達は、この作戦の発案者じゃ(・・・・・・・・・・)ない(・・)ってことです」

「!」



 ――ガイツが、ベッドに横たわるマリスタへと視線を移す。



「作戦前、作戦の内容を聞いたとき――その子は私に言ったんです。『私は王女と友達になりたいんだ』って」

「とっ……」

「――――」



〝私は、あんたの友達になりたい〟



 声をらし、あわてて口を閉じるペトラ。その驚き――いなあきれも当然だろう。

 状況を一顧いっこだにもしていない、余りにも的外れな感情だ。

 下らない、真面目にやれと一蹴いっしゅうされても文句は言えないだろう。

 だが厄介やっかいなのは、



〝そうか。俺はなりたくないな〟

〝いいわよ。私が勝手に思ってくだけだから〟

〝そんなものを友達とは言わない〟

〝うん。だから、これからなるんだよ〟



 マリスタにとっての「友達」とは、世間一般せけんいっぱんの友達とはどこか違う何かだということ。



「ま、僕はそんな勢いで飛び出たような言葉に義理立てする必要ないじゃん、と思うんですが。まあ、せっかく無傷で捕らえた王女をミリでも傷モノにするのはいただけませんしね。それ自体が交渉を不利にしますし。なんで今回は作戦の発案者を立てることにしました」

「私も同意見です。そしてこの先も、リシディアと争いが起きないよう全力を尽くします。みんなで、一緒に」

「…………」



 ガイツは黙り、そして学生達を見渡す。



 やがてその口から、大きな溜息ためいきれ出た。



「…………こんな心境だったのかもしれんな。フェイリー・レットラッシュも」

「……ガイツ」

「分かっている……生徒会長、風紀委員長。もし許してくれるなら、我々アルクスを――」

「そう、それです。その内言いに行こうと思ってました」

「――何?」



 リアとギリートが一瞬目を見合わせ、深く頭を下げる。



「私達に、交渉の経験はありません。先生方にも、そうした経験は多くない方ばかりです」

「今回は対立することばかりでしたけど。良かったら今度はちゃんと共闘しませんか。どうか力を貸してください」

「お願いします」



 あっけにとられる巨躯きょくの男。

 その隣でペトラは笑い、ひじでガイツを小突こづいてみせた。

 憮然ぶぜんとした面持ちではあったが――二人同様、ガイツもぐわりと頭を下げる。



「こちらこそだ、プレジアの諸君。どうか共に、プレジアを守って欲しい」

「……はい。じゃあ、もう頭を下げ合うのは無しにしましょう。バルトビア兵士長」

「? どういう――」



 ガイツが顔を上げる。



 彼の目の前にあったのは、リアの白く細い右手だった。



「……。そうだな」



 大男が少女の手を取り、握手を交わす。

 その隣で、ペトラが突き出した手をギリートもとりあえず握っていた。



 ああ、全く。



 無関係な俺の目の前で、そんなクサいやり取りをしてくれるなよ。



「見舞う気が無いなら帰ってくれるか。少し休みたいんだが?」


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