「師弟問答、転移奇襲策②」
「俺はアルクスに拘束されて動けなかった。俺の策が採用されたとして、囮役も奇襲役も俺でない誰かがやる可能性が高い。ある程度の戦闘能力があれば誰でもできる状態にしておくのは当然だろ――――まあ、それなりの戦闘能力を持っていることは絶対条件になってくるけどな。それを芝居の千秋楽でマリスタに伝えるつもりだった」
「そっか……! 戦闘能力……」
「……そうだ。だから頭を抱えたよ。戦う場所が魔動石の間になって……黒騎士の脅しで、戦闘能力のある者を応援に呼べなくなった時は」
「じゃあ、あの時フォンさんが魔動石の間に飛んだのって……実はすっごいファインプレー?」
「…………そうだ」
――正確には、俺がパールゥをあそこに転移させるよう、リセルに頼んだのだが。
そんなことを言う訳にも、
「……『そうだ』、と来たか」
「え?」
「ねえ、ケイ。あなた……もしかして意図的にフォンさんを呼び寄せた、ってことはないわよね」
「!…………?、何を無茶なことを。そんな方法があったなら教えて欲しいぞ」
「方法があったら呼んでた、って風に聞こえるわね」
「!」
「増援は、黒騎士に『戦力』として認識されない人である必要が出てきた。そしてその場合――その人物が『囮役』と『奇襲役』、どちらになるにしろ――死の危険は圧倒的に高くなる。戦いの心得が無いのだものね」
「……俺に――」
「そうなると、策の成否以前に……その非戦闘員が、黒騎士を恐れて立ち向かえなくなる可能性がある。言い換えたら、『命を捨てても策を成功させるという意志を持つ非戦闘員』が必要だってこと…………あまりに出来過ぎてると思わない? そんなタイミングでフォンさんが――」
「俺に増援は選べなかった。それが全てだ」
知らず、声が低まった。
シャノリアは、相変わらずの真摯な目で俺を見つめている。
悟られないよう、大きな呼吸で息を整えた。
「……ごめんね。確かに結果論だし、意味のない話だったわ。忘れて」
「……まあでも、あの場面でパールゥが来てくれたのは僥倖だったよ。お陰でアヤメに致命的なダメージを入れられたのは確かだ」
「……しかしよく思い付いたわね。あんな危険な作戦」
「転移魔石で奇襲、って策を考えていれば自然とそうなるだろう。魔動石の間にあった携帯転移魔石の親石、俺が持つ子石。人質にされ、常に黒騎士の傍にいる王女。そして――黒騎士の性癖」
「せ――せいへき??」




