「師弟、つかのま」
「ぱっ……ぱっぱっぱっ、ぱっっ」
「何ですそんな大げさに取り乱して。別に処女ってわけじゃないのでしょシャノリア先生だって。人間としては至極大事な営みですわセック」
「言わなくていいですから!!!!! というかそういう問題ではありません! TPOという言葉がございましてねパーチェ先生、私は担任として教育的指導についての――――」
「『痛みの呪い』の発作ですよ。ああでもしないと体を押さえられなくて」
「――え……!?」
「主治医の先生、ベインウィ先生でしたっけ。到着されたんですよね? 私が呼びに行きます、今どこに?」
「あ、学長室で今――」
リセルが俺から降り、シャノリアに適当なことを吹き込んでいる。受けたシャノリアもすっかり真面目顔でそれに応じている。
あんなことで煙に巻かれるシャノリアもシャノリアだな……人が良いというかなんというか。
だが、確かに。
案の定と言うべきか……痛みの呪いは、また俺の中で復活しているようだ。
今も意識の隅に呪いの燻りを感じる。
その燻りは、大魔法祭前と変わらないように思える。
だが……トルトやギリート、アヤメとの戦い、その他諸々。
学祭期間であれだけ無茶をやらかしたんだ。その蓄積は、確実に呪いの進行を招いているだろう。
だが、三回だ。
呪いを全く感じなくなる瞬間が、この四日間で三回もあった。
来ているというコルトスの意見も踏まえながら――必ず見つけ出してやる。
痛みの呪いを抑える方法を。
「………………、ふぅ」
「ため息つきたいのはこっちなんですけど?」
気付けば、シャノリアは俺のベッドの傍まで来ていた。
天井からの薄明かりをシャノリアの身体が遮り、彼女の表情を上手く読み取れない。
医師を呼びに行ったのか、リセルは部屋からいなくなっていた。
「……何か言いたいことがありそうだな」
「山程あり過ぎて何から聞いたもんか悩みまくりですけど」
「そうだな。俺も……自分で考えるのに少し疲れた。何でも聞いてくれ」
「や、私も頭取っ散らかってて整理は出来てないんだけど……とりあえず。ケガの具合はどうなの?」
「治癒魔石のお陰でほぼ完治だ。左腕の違和感もじき消えるとパーチェから聞いた。……マリスタ達もそうなんだって?」
「ええ。もう少しすれば目覚めるだろうって。あなたがこうして翌日に目覚めたくらいだものね。心配ないわ」
「……そうか」
「素直に『良かった』って言えば可愛げもあるのに」
「さてね」
「ホント、こんなもので済んで良かったわよ。下手したらみんな死んでた……プレジアだって、リシディアだって無くなってたかもしれない。歴史が大きく変わってたかもしれないんだもの。感謝してもし足りないわ」
「みんな頑張ったろ。…………俺だけじゃない」
「……『俺は何もしてない』と言わないだけ成長ね」
「五月蠅い」
「はいはい…………いつから考えてたの? あんな作戦を」




