「純度100%の」
……バカな。
あれだけ滅多刺しにした上、体内からズタズタにしたんだぞ。
五臓六腑殆どが潰れてた筈だ、一体どうやって――
「治癒魔石だよ」
「……何だと?」
「お前もやった通り、治癒魔石は砕けていても効果が続く。あれは魔石だ、魔装具のように内部に魔術構築式が組まれてるワケじゃない。魔力が尽きない限り効力を発揮する――欠けた分効力は落ちるだろうが」
「誰が……」
「お偉方と、お前のとこの生徒会長、風紀委員長だよ」
「風紀委員長!?…………ギリートが兼任でもしたか?」
「ああ、そこは話してないんだったか……リア・テイルハートが次の風紀長に決まったんだよ」
「そ。そうなのか」
「リシディアとの話し合いも、殺してない方が角が立たんからな……刺傷は致命傷になり得るが、傷の大きさから言えばごく軽傷だ。無数の風穴でも体が真っ二つになってるより治癒の範囲は狭くて済む、それが幸いした。頭目を治してもお釣りが来たくらいだ。ありがたく有効活用させてもらったよ」
「有効……まさか」
「そう。お前の左腕は治癒魔石で治した。痛みはあれど翌日には問題なく動く程度までな」
「何やってっ、俺よりよっぽど重傷の奴が――」
「騒ぐな。ちゃんと治療したよ。今はこうしてお前だけ隔離してるが、他はみんな別の部屋で寝ている。こうでもせんと二人きりの時間が取れん」
「おい」
「安心しろ。背骨真っ二つマリスタ・アルテアス、体真っ二つ寸前ロハザー・ハイエイト、全身穴だらけ黒騎士に心臓一突きパールゥ・フォン。全部綺麗に治療できてるよ。その上でまだ魔力が余ってるときてる」
「……とんでもないな、あの魔石」
「極上の品だよ、まったく羽振りのいいことだ…………数日もすれば満足に動かせるようになる筈だ。癒合するまでしっかり養生しろよ」
「パーチェ先生、呪いのお医者様が今――・・・」
・・・ガチャリ、のちパキリ。
唐突に開いたドアの向こうから現れたシャノリアが、俺に跨っているリセルを見て動きを停止した。
……あれは思考も止まってるな。序に理性も。
「な、なななな……ぱーちぇ、せんせ、」
「…………………………」
……リセルが珍しく長考している。
よっぽど虚を突かれたらしいな。面白い。
そんな俺の思考を読み取ったのか、こちらに冷たい流し目をくれるリセル。
やがて魔女はにこおと笑い、ぽつりとこうつぶやいた。
「…………あン、邪魔が入ったわね。じゃあアマセ君、続きはまた今度」
「つづ――――?!?!」
……お前は色事しか引き出しが無いのか。
ワンパターンな奴め。




