表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

886/1260

「復讐――――許されざるべきその行為」



「……お願いだ。頼む。俺達を助けてくれ」

「ソレガ人ニモノヲ頼ム態度カ?」

「…………お願いします。どうか俺達を」

「焦りが見えないなァ!!? 助かりたくないのかァッ!!??!?!?」

「――――助けてくださいっ。お願いだから俺達を助けてくださいッ!!! どうか、どうかその石をください。俺達に与えてください!!! 何でもします、今助けてもらう為なら俺はあなたの為に何でも致しますッ!!! だから……死にたくない死にたくない、まだ俺は死にたくないっ!! どうか、どうかどうかッッ!!!!」

「見殺セ」

「……え?」

「助ケルノハオ前ダケダ。ソノ女ヲ見殺セ。オ前ノ意志デソイツヲ死ナセロ」

「…………、・・・――」

「それが出来るなら」



 裂けた口と目でわらいながら。

 深緑が、アヤメの足元に落とされる。



「取りに来い。その女を見捨てて」

「……………………、…………」



 ……………………体を、前に。



 深緑に、い寄っていく。


                  あと三()

 ただ生きることだけを考え。


                  あと二()

 

 矜持プライドも恥も捨て。

 

                  あと一()


 パールゥさえ、見捨てても――――――俺は、生きた















                   深緑が、黒に踏み砕かれた。














「…………この世の何より醜悪しゅうあくだな。半端者はんぱものがハンパに生へしがみつく様は。絶頂の幸福も一度に冷める」

「……………………………………」



 ――解っていた。

 解っていたじゃないか。



 奴が外道であること。

 奴が、俺達三人を最初から生かして帰すつもりなんか微塵みじんも無いこと。

 どこかで、やるだろうと思っていた。

 その通りのことが起きた。

 それだけだ。



 死ぬ。

 パールゥも俺もココウェルも、そして恐らくアヤメも。

 奴は俺達を殺した後、全力で言い逃れとこの場からの脱出を試みて――――それが叶わなければ、そこで死ぬだろう。

 死に臨むその瞬間まで、力の限りの憎悪と絶望を、周囲にき散らしながら。



 奴は、これを復讐だという。

 世界が憎い。世界中の人間を殺してやりたい。

 だから出来る限り多くの者に出来る限りのを植え付け、死んでやると。



 そして俺達三人は、その復讐を一身に受けて今、血溜ちだまりに横たわる。



 理由は「アヤメの前に現れたから」。

 「アヤメの気分で、復讐の対象となる順番が早かったから」。



〝殺す。家族を殺した者を、この俺の手で。必ず〟



 ………………気分で行われる「復讐」って何なんだ?



 復讐は悪だ。

 理由をどう正当化してみせたところで、自分のエゴで他人の、その他人に影響され存在するいくつかの生を破滅させ、無限のを生み出す行いが真っ当なことであるはずはない。

 恥ずべき。ばっされるべき。地獄へ落ちるべき道。



 だから俺は、魔女の手を取り魔王を求めた。

 この道にちる者など、共に歩くものなどあってはならない。

 その他大勢の有象無象うぞうむぞうに、関わることなど出来ない。



〝ならば何故――――〟



 だからこそ、そんな道にいる俺にギリートは問うた。



〝お前は今その有象無象の為に、我等襲撃者(・・・)と戦っているというのだ?〟



 そして、俺は今その問いへの答えを明確に持つ。



〝理由なんてたった一つだ――――これが俺の遊興だから〟



 遊興ゆうきょう。遊びなのだ。



 束の間、牙を削がれることを条件に――――俺は一時いっとき、自身が魔王であることを忘れる。

 だから笑いもすれば怒りもする。悲しみもすれば安らぎもする。

 遊興だから。それが遊びであるから。

 だから――――



「――――……!」



 ――――そうだ。だから(・・・)だ。

 だから、俺はこんなにもアヤメに怒りを覚えたんだ。



 出来る限り多くの人間に憎悪と絶望をき散らすことがアヤメの復讐。

 そうだろう。その通りだ。

 そういう復讐もあるだろう。



 だが、それなら――――何故あんたは楽しんでいる(・・・・・・)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ