表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

883/1260

「惨劇――――それはまるで、」



 温かな液体が服に染み入り肌を刺激する。

 伴い、傷付けられた肉と臓器が激痛を訴えかけ始める。

 俺の左脇腹(わきばら)下を貫通かんつうした光の剣がそのままぎ抜かれたのだ。



「ケイ君ッ!!!!」

「どしたどしたどしたァァ! 互角の相手に随分ずいぶん逃げるなァァ!!?」

「…………………………………………、」



 血を走らせながら飛び退すさる。

 アヤメはここぞとばかりに追撃してくる。

 ココウェルは状況も飲み込めない様子で顔を恐怖と絶望に歪め、ただ大きな口を開けて息と涙を吐き出している。



 ――見るな。そんな目で俺を。

 お前の犠牲ぎせいなんて、最初から――



〝ふふっ、ってことはやっぱり――あんたが頼れるのは、わたししかいなかったってことなのね?〟



「ッッ……!」



 氷弾の砲手(アイスバレット)



 肉薄にくはくしてきたアヤメの背後に氷の弾丸を準備する。

 奴の目はこっちに夢中、これなら――



「――剣の攻撃がきますゥ。危ないので後ろ行ってください王女様ァ!!」

「!!!!」

「あああああぁぁっっ!!!? いやだいやだぁぁぁぁっっ、、!!!」



 ――本当に耳障りなその悲鳴に、氷弾の砲手(アイスバレット)が残らず消し飛ぶ。

 それに呼応するように、眼前の黒騎士が狂った笑い声をあげる。

 まるで極限までえたけものが肉を眼前にぶら下げられ、猛り狂っているように。



「――糞野郎くそやろう――糞野郎――――――ッッ!!!」



 ココウェルを氷弾ひょうだんの盾にした、その一動作のぶんさきんじた動きで左の剣を構え、アヤメに振り下ろす。

 しかし俺には解っていなかった、



「遅いなぁ。無駄な力が入り過ぎだバ~カ」



 怒りに狂っていたのは、今の自分も同じなのだと。



 時間の流れが違うかのような速度で、アヤメが右の光剣こうけん逆手さかてに持ち替え、放つ。

 手首に命中した柄頭つかがしらでの一撃は、振り下ろされようとしていた俺の氷剣をあっさりと外側に弾き、俺は胸を開いた実に無防備な格好でアヤメの、



 手首を返した光剣の逆袈裟ぎゃくけさに、斬り裂かれた。



「が、ぁ゛――――!!!」

「おや浅いな? 胴を両断したつもりだったけどなぁ???」



 ――血飛沫ちしぶきを上げながら、俺の身体が急速にアヤメから離れていく。

 咄嗟とっさ瞬転(ラピド)で後退していたのが幸いしたか。



 落下の中で盾の砲手(エスクドバレット)を展開、それを手でつかみなんとか根へとよじ登る。



「っ゛、が、ハァ゛……がはッ……あ゛、げァっ……!!!」



 ――つんいになった胸から、口から血がしたたり落ちる。

 氷剣を手放し、左手を貫かれた脇腹に当て、凍結させる。

 同じように、胸の――胸の傷が、これ、たぶん肺を、



 脳天を刃が滑った。



 いや、割った(・・・)



「づ゛ッッッ!?!?!?! ぁ、あ、ああああ、ああ、あああああ……!!!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ケイ弱いな。ぬるま湯につかりすぎてるな。アヤメの言う通り、復讐にのみ身を置いていたらもっと強くなってただろうな。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ