「外道――――絶望、今ここに」
――魔力回路に走る痛み。
呪いではない。
これは今までやったことも無い――――発動した魔法を無理矢理破壊した痛みか。
「!? け、ケイ君どうして」
「っ……この……」
空中で氷の霧と化し消滅した氷弾の砲手の向こう側。
晴れていく霧の向こう側で、アヤメは、
「……よかったです、王女。ご無事でしたか」
「あ……ぁ…………ぇ……?」
潰れている筈の左手でココウェルを掴み、まるで攻撃の盾にするように――――|自分の前方へと掲げていた。
「……この腐れ外道がッ……!!」
「王女様を、盾にッ……!!?」
「危ない危ない。危うく……リシディアとの戦争になる所だったなァニセモノっ!!!」
邪悪なる破顔を貼り付け、掠れた声で笑う最悪の騎士。
左腕は右手にした剣と同質に見える光にうっすらと包まれている――ココウェルが発動させていた心ばかりの治癒魔石の効果と、自身の魔装剣による補助で無理やり動かしている……といった所か。
しかし、これで……もう遠距離からの攻撃は使えない。
いや、あれでは近距離戦でさえ……!
「来ないのか? さっきまでの威勢はどうした!!? 互角なんだろ私と? あともう一押しで私を殺せるんだろお前は!?!?!?」
「……貴様……ッ!!」
「ははははははは!!……何の怒りだそれは。先に私を追い詰めたのは貴様等だ。この状況は貴様等が呼び込んだ結果だろうがッ!!!はっははあははははははははは!!!」
アヤメが地を蹴る。
ココウェルを、左に抱えたままで。
「ひ、ぁ――――きゃああああああッッッ!!!!」
「ッッ……パールゥ!!」
「解ってるよ! なんとかする!!」
鼓膜に染み響く、死の恐怖を乗せたココウェルの悲鳴。
大声でそれを貫き、どうにかパールゥと連携を取り――左に所有属性武器を携え、突進する。
〝わたしとこの祭りを回りなさい、ケイ・アマセ。二人っきりで〟
「――――――糞ッ……!!」
「何だ???? 急に振りが弱っちいなぁ!?」
「ぐッッ――!」
――防戦一方。
反撃に転じることができない。
いや――よく見ろ。
よく見て、奴が攻撃に夢中になったその隙を突けば――――!
「そらそらそらそらそらそらァァッッ!!!!!!!」
――ここだ!
「あ~ぶないっ!!!!」
「いやぁ゛あ゛あ゛あ゛ああっっっ!!!! あぁぁあああっっっ!!!?!?!」
「!!!!!!!」
――内臓が揺さぶられるほどの力で腕を、体を、剣を止める。
だが、
「なぁ~んだその意味不明な動きは~ぁ!????!!?!?!??」
その硬直は自分でも解るほど、あまりにも隙だらけだった。
――――異物が、俺の肉を抉り裂く。
「ぁ――――――ぁあ゛あ゛あああッッ!!!」




