「覚悟――――おうじょさま、あぶないっ」
横腹に衝撃。
凍縛の衛士を展開。空で体を捩じり盾の足場で体勢を立て直し、掃射する――――パールゥへ向かうアヤメの方へ。
「ハァ――――王女も守らなきゃならないのが騎士の辛い所だ」
「パールゥッ!!」
「ッ――――」
――凍縛の衛士に遮られ逃げるアヤメ。
何故かその場にへたり込んだパールゥの下へ着地する。
「っ……どうしたパールゥ、やられ――――、」
「ごめん、ごめんなさいケイ君。役に立たなくて苛立ってるのは解ってる」
「――すまん」
「いいから黒騎士を見てて。私はもう少し……もう少ししたら、立てるから」
――言われた通りにアヤメへ視線を戻す。
やはりアヤメは追撃してきていなかった。
先程鍔競り合った時、既に息を切らしていたから。
俺がそこに、後一押し攻め込めれば――――死の恐怖で、義勇兵コースでもないこいつをこうも震え上がらせることはないのに。
「泣きたくなっちまうなぁ……お前のあまりの非力に」
「!」
「『あと一押し』を押し込めない。状況を変えられず、徒に力を消耗していくだけ……ハァ……絶望してるか? 死はもう目前だぞ!」
「……自分の限界は恐れないのか? あんた」
「限界? かっはははは、バカなことを!! 私は世に命の限り破壊と絶望を与えられればそれで満足さ! 生なんてそのための手段でしかない。無くなれば残念でこそあれ恐れなど欠片も抱くものか……それにお前。まさか『私に恐れを与えることができている』と本気で思ってたのか!? 笑える話だ!」
「死が目前、それは今のあんたにも言えることだろ。俺達が――」
「私を殺せるのか?」
「――――――、」
――一瞬、心臓を掴まれたかと錯覚した。
アヤメの顔が狂喜に歪む。
「そら見たことか。力の面でも心の面でも、お前は私を殺せない!! 何故ならお前は『復讐者』などでは決してないただの凡百なガキに過ぎんからだ!! 私は何の覚悟も力も持たないニセモノのお前に折檻する側なんだよ!」
「その折檻される側と互角の戦いをしといて、よく言えたもんだな」
「……はは、はははははは!!――――そうか。私が合わせていることにさえ気が及ばんか」
「負け惜しみだな」
「ふふふふふふふ……! いいだろう。楽しみはもう少し取っておきたかったが……知れ。望みを絶たれるという言葉の意味を」
アヤメが攻撃の構えを見せる。
俺はパールゥに目配せし、氷弾の砲手を展開して再び奴を――
「――――おうじょさま、あぶないっ!!!」
「!?――――ッッッ!!!!!!」




