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「重なる面影はいつかの嘘で」

「何を――――――やってんのよ、風紀委員どもッ!!!!!!!」

『!!』



 俺の目の前で、汚れ一つない真っ赤なローブがひるがえる。



 見上げた先には、赤毛を頂いた小さな肩の少女。



「マ――マリスタ!?」

「アルテアスさん……!?」

「アルテアス!? あ、あんた……何やってんだよ」

「それはこっちのセリフよ!! あなた達、テインツ君の友達の風紀委員の人よね? 寄ってたかって一人相手に何してんの?」

「よせマリスタ」

「な……何してんのはこっちのセリフだぜ、アルテアスさんよ! あんた、自分が今何やってんのか分かってんのかよ! そいつはな、アンタみたいな身分の大貴族が助けるべき人間じゃ――――」

「助けるべきじゃない人間なんていないッッッ!!!」



 激昂げきこうしたマリスタの怒声が図書室前の廊下を制圧する。

 あまりにも正しく響き渡ったその言葉に、図書室前にいた全ての人の中で明らかに善人と悪人が入れ替わったのだろう。大柄は目に見えて狼狽ろうばいしだし、恐らく怒りに体を震わせてマリスタをにらんだ。



「ふ――ふざけないでくれよアルテアス! アンタは大貴族だ、ティアルバー家に並ぶ力を持ってるんだ! だからこそ、あんたが貴族として模範もはんを示さねぇでどうすんだよ!? あんたはこっち側の人間だろ!!」

「うっさいわね!!! 聞こえなかったみたいだから何遍なんべんでも何万遍なんまんべんでも言ってあげるわ――人間にこっち側もどっち側もないのよ大馬鹿男ッ!!! 私はどんな人でも助けるし、どんな理由があろうと誰かをイジめる人は許さないッ!! あんたは貴族かもしれないけど、人としてはクソ以下よ! 恥を知りなさい!!」

「な――――なぁァ……――――ァルテアスゥゥゥッッ!!!」

「マリスタ、やめろ!!!」

「うっさいケイ、ちょっと黙ってて!! システィ! パールゥ! ケイをお願い!」

「わかったわ」

「アマセ君っ、大丈夫!?」



 人込みから現れたシスティーナとパールゥが駆け寄ってくる。

 俺はそれを振り払い、猛然もうぜんと大柄に歩み寄っていくマリスタを追う。



 馬鹿。

 お前が、そんな奴のために時間を割くことはない。

 これは俺の問題なんだ。俺のために起こる由無よしなごとに、お前が手をわずらわされる必要はない。



「マリスタ――――」



 お前は、俺に関係しなくていい。

 俺のために動かなくていい。



「マリスタ――――!」



 シャノリアも、トルトも、システィーナも、パールゥも、リセルも。



〝ありがとう、けいにーちゃん〟



 お前達は――――



〝うん。いいんだよ。任せて、メイ。母さん〟



 お前達は、俺の中に居なくていい――――!!

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