「臨死――――意識の消える一瞬」
「――は、ははは。ははははは……!! 痛むか? 呪いが!!」
アヤメが呪いの活性化を見抜き高笑い死ている。
開いた死界は既に真っ赤に縁取られ、目の血管がのたくっているように痛む。
……頼む。
頼むから止まってくれ。
今の状況で、ギリートと戦った時と同死゛条件が作れよう筈も無い。
その時と同死゛条件といえばパールゥが今傍に居るが、それはどうも――呪いを打ち消す条件では有り得ないようだ。
〝お前は終わりだ。天瀬圭〟
〝闘争心起こすだけで発作が起きる体……戦士としても、言っちゃナンだけど人間としても完全に戦力外じゃないか〟
ふざけるな。
貴様のせいで、どれだけ遠回りをしたと思っている。
どれだけ苦労したと思っている。
「……勘弁しろよ、マジで……!!」
嫌だ。
こんなしょうもないものに最後の最後まで足を引っ張られて、俺は負けるのか――
「いいのか? 後ろ取ってるぞ」
影に。
裂け嗤う口が、映ったような気がした。
「――!!!!」
「ケイくっ」
――――――首根で火花。
捻転。右手に剣、左手でパールゥを突き飛ばす。
順手に握った氷剣を、首を守った盾の砲手を飛び越えるようにして右肩の上から刺突。
手応え。外に逸らされる剣。
左手に剣を錬成、体を返しながら二撃目を振るおうとして、
「――づァ゛ァ゛ッッッ!!?!!?!?」
両眼球の後ろで呪いが弾け、首が攣ったように曲がり。
血の噴水が、吹き散った。
「――――――、ぁ」
「ケイ君ッッッ!!!!!!!」
顔、髪に落ちる赤い斑。
聞いたことが無いほど悲痛なパールゥの叫び声。
捩った体に釣られ動いた視界の右下には――――氷剣を取り落とし痙攣しながら血を吹き出す右腕、と、
「――――ああ、」
逆手に内へと振り抜かれた敵の魔装剣の切っ先が、真っ直ぐに俺の右側頭へと向かってきている光景。
――――死ぬ。
左の剣が間に合わない。
えすく縺ョ遐イ謇九?翫お繧ケ繧ッ¥ットが撃てない。
体が動かない。血が止まらない。呪いが痛い刺さる刺さる剣が刺さる頭に頭に頭頭頭頭
〝死なないで、兄さん!!!〟
赤黒い稲妻を、見た気がした。
「――――――ぁああああ゛あ゛あ゛あ゛あッッッ!!!!!」
「ッ!!?」
――――――一閃。
視界に光の欠片。
散り消えたそれは紛れも無く――――敵の魔装剣?
「ケイ君ッ!」
「っ!!」
パールゥの声に、ようやく右手から滴る鮮血に意識が向く。
凍の舞踏で軽く凍結し、止血する。
「っ……はぁっ、はぁっ……パールゥ! 無事か!」
「大丈夫っ! ケイ君こそそれっ! 右腕がっ!」
声と共に、パールゥが俺の傍まで跳んでくる。
なんでも無いことを示そうと右手を動かした――つもりだったがピクリとも動かなかった。
筋を断たれたか。
「……大丈夫だ。これより酷いケガはナイセストの時もあった」
「ちっ、治療するから!」
「治癒術士でもないとこれは無理だ。大体お前、そんな無防備に跳んできて――――」
――アヤメは、何故追撃しなかった?




