「映像――――誰も予期せぬエキシビション」
「本来魔動石がせり上がってくる空間を落下していくわけですから、距離の差はあれど当然視認されるでしょう」
「……その短い時間が勝負か。魔波の感知は?」
「防護結界を展開して、魔動石の魔波が大きくなっています。弱った黒騎士の魔波を察知できるかどうか」
「目だけが頼りか……あまりにも少なすぎる。勝算が」
「……博打といえるのかもしれないわね。そこまで来ると」
話に隙を見出したリセルが会話へ割り込む。
ガイツとクリクターが彼女を見た。
「現状、『黒騎士が狂気の女だった』って説の方が有力なくらい、突入の有効性には疑問があるんじゃない? ヘタに突っ込むのは痛いだけよ」
「ではどうする? 黒騎士をあのまま放置するのが賢い判断だと?」
「アマセ君とフォンちゃんが――」
「二人が既に死んでいたら?」
「……!」
「俺が恐れるのはそこだ、パーチェ・リコリス。あの|リシディアとどこまでつ《・・・・・・・・・・》ながっているか分からない女が万が一今向こうで野放しだった場合、プレジア脱出のため、あるいは更なる追撃のため増援を呼んでいる可能性がある。そうなれば今回の件が表沙汰になる事態は避けられない。更に黒騎士が学生共の推測通り狂人だった場合、最悪王女ももう殺されている。そうなれば……プレジアとリシディアの全面戦争の可能性は遥かに高くなる」
「……っ、」
「想像も付かない数の犠牲か、今ここにいる者達から数人の犠牲か。事はもう博打の段階だということだ。風紀委員一人が、マリスタ・アルテアスが重傷を負わせられたその時からな」
「…………」
「手負いとはいえ、黒騎士がどれだけ消耗し、どれだけ体力を残しているかも俺達には判らん。解らん以上、最悪の想定をして動くのは――」
「判ればよろしいんですね?」
ガイツが言葉の主を――ナタリーを見る。
リセルも目をぱちくりとさせて彼女を見た。
「……まさか。付けたのか? あの一瞬で?」
「なんだ。どういうことだガイツ」
「あまり舐めないで戴きたいですねえ、私を。転移の直前、なんとかパールゥ・フォンの肩に設置することに成功しました。本部の時と同じように、この魔石で映像を投影できます。本部の魔石は破壊されているでしょうから、大画面への投影は難しいですが」
「見せろ」
「今起動してます」
(……元々は私に突けるつもりで準備してたってことか。なんて危ない小娘だ)
ナタリーが映像を起動する。
そこに映ったのは、
『!!?』
「な――何をやってるんだ、あいつらは……!!」
その場の全員が予想だにしない、戦闘の光景だった。




