「脅迫――――助けられるのは一つだけ」
瞬時に魔法障壁を展開。
閃光が弾け、目が眩み。
それでも、無慈悲に――――障壁の罅割れる感触だけは、ゼーレを伝わってきた。
「――パールゥ、逃げ」
「精霊の壁ッ!!」
――パールゥの声と、同時に。
俺の障壁は弾け、パールゥが展開した障壁と光斬が接触、共に爆ぜて俺と彼女を吹き飛ばす。
体を捻り、パールゥを腕に抱き――盾の砲手を展開、先程居た場所から数メートル下にある魔動石の「根」へとなんとか落下した。
「っ……!」
「ケ、ケイ君!」
「はははははは……着地もできん体たらくでも、目の上のたんこぶな粘着質の女でも、助けられるものなら助けたいか。つくづくくだらん男だお前は。そのザマで復讐などと死んでも抜かすなッ!!」
「……………………」
――パールゥを離し、立ち上がる。
あらん限りの怒りを灯し、アヤメを睨み付ける。
「……誰を狙った」
「あァ?」
「今誰を狙ったのかって聞いてんだッ!!」
「何だよその顔、ははははははは!」
「アヤメぇッ!!」
「私にキレてどうすんだバァーカが!! 実力もわきまえないでノコノコ死にに来たのはそのメスガキだろうが!! ははははははは……………………助けてやろうか?」
「――何?」
「そのガキ。大切なんだろう? 身を挺して庇う程に。我が主の王女様よりよっぽど大切なんだろう?」
「!」
「黙れ。お前の趣味には付き合わん」
「あらまあ王女様、そんなにショックをお受けにならずに……彼らと貴女では歩んできた日数が違うのですから。だから助けてやってもいいぞ――――この腕を振るうのは一度だけだ」
「!……?」
「プレジアか? メスガキか? 他のどこかか?」
アヤメが右腕を振り上げ、その手の中に光線を出現させる。
「お前が決めろ。選んだ一つ以外を見殺しにしろ。お前の意志で人を殺せ。生ぬるい沼で安穏としている自称復讐者に、先達として手ほどきをくれてやる」
「………………」
……魔動石、パールゥ、ココウェル。
奴にしてみれば、俺は三つもの人質を取られた格好の嫐り者という訳だ。
「……くく、」
「――?」
「ケ――ケイ君?」
「くくくくく……はははははは……!」
…………人間の、屑が。
「……雑だな、あんた」
「……あ?」




