「開演――――少年少女二人劇」
――――アヤメのその第一声で、策の第一段階は見事クリアしたのだと悟った。
跳び、その人物の近くへ着地する。
転移してきたその人物は感極まった表情で、俺のローブのすそを握り締めた。
「……良かった、ケイ君。私、もう君が死んじゃってたらどうしようかと……!」
「――ぱ、パールゥ!?」
――そうだ。パールゥ・フォン。
コイツしかいない。
当初、俺が考えた策の中で共闘をするのは別の人物だった。
だが状況が変わった。
「戦闘能力がある人物」が増援に駆け付けることでココウェルが殺される可能性が大きくなる以上、戦闘要員として認識されない者を選ぶしかない。
直前にリセルへ送ったメッセージだったが――魔女め、上手いこと送ってくれたな。
――さて。
「っ!?」
パールゥの胸倉を掴み上げ、鼻先が擦れんばかりの距離でパールゥを睨み付ける。
それを、
「っ……、ごめんケイ君、でも、私いても立ってもいられなくて――」
(俺の話をよく聞いてくれ、パールゥ)
(――え?)
(先に確認しておくことがある――パールゥ。お前は、)
これ見よがしに、アヤメへと見せつける。
(俺の為に死ぬことができるか?)
「――――」
「くっ……ははははははは!!! 余程の不測の事態が起こったようだな!! この私に対して拗らせた小娘一人とは! ははははははは――――」
よし。
掴みはバッチリだ。
(……死ねる。嘘じゃないよ。私、ケイの為だったら何度でも――)
(その心意気、今は大いに当てにさせてもらう)
胸倉を掴んだ手でそのまま、癇癪を起したようにパールゥを突き飛ばす。
尻餅を着いたパールゥが小さく悲鳴を上げる。その調子だユニア。
倒れたパールゥの頭髪を無造作に掴み、痛々しく引き寄せた。
演技でない苦悶が彼女の口から漏れる。
それがまた、一層アヤメの笑い声を大きくさせたようだった。
(黒騎士を倒す策がある。手短に話すからよく聞いてくれ。今後教え直すチャンスはもう無いと思う)
(黒騎士を……倒す?)
(そうだ。俺とお前で。無名のクソガキたった二人が、このプレジアを救うのさ)
「くっははは、ははあ……ハァっ。まったく楽しませてくれるよ、お前達は! 今の気分はどうだアマセ。カスみたいな連中の中でも一際カスで厄介な女がこの局面で両腕にぶら下がった気分は!!? かははははははははは……どうだ? 何なら今すぐ斬り捨ててやってもいいぞ。ナァ!?」
視界の端が、光った。
「!!? バ――」
「え――」




