「餓鬼――――復讐問答」
「私もそうさ。幼いころから疎まれ嫌われ痛みを刻まれ、復讐と血と戦いだけを糧にここまで歩いてきた。お前もそれを望むクチだろ?」
「――馬鹿に――」
「見りゃ解んだよその渇き切った目! 地獄を刻まれ光を無くした濁り目、私はそんなのを山程見てきた。だが――――同類とはいえ最低次元だ。お前の渇きは底が浅すぎる」
「知ったことか。不幸自慢ならヨソでやれ。俺とお前を一緒にするな」
「そうだな、一つだけ違う所がある。お前は温室育ちの箱入りで、私は汚物育ちの実験台だってことだ」
『!!』
閃光。
そして魔波。
腰に据えられたアヤメの右腕が光を発する。
彼女の腕を貫くように伸びた幾筋もの光の帯はアヤメの右腰に収束し、一振りの光の鞘を形作る。
その文字通りの光線を、アヤメは右手で俺へと掲げてみせた。
「『閃光剣アインスリュカル』。これが実験の成果の一部さ」
「所有属性武器に名前まで付けるか。随分可愛がってるんだな」
「所有属性武器……そうだったらどれだけ良かったことだろうな」
「?」
「これは魔装剣さ。気の狂った刀工が私の体に刻み込みやがったな!」
「!?」
「! 体に――」
「想像できるか? 年端もいかぬ少女が腕に魔装剣を縫い込まれる痛みが。『作品』として扱われ、ひとときさえ『人間』として扱われなかった子どもの気持ちが」
「知らん。下らん」
「ハ! まあそうさ。別に同情してもらおうってんじゃない。復讐のスケール比べなんてのも無意味だ。だが……」
アヤメの顔から笑みが消える。
「何なんだ? そのザマは」
「!……?」
「何を訊かれてるのかも解らんか。つくづく落胆させてくれるな」
「何度も言わせるな知ったことか。俺と――」
「だから弱いままなんだ。お前は」
「――――――――、」
「――……何だその情けない顔は。そういうのを逆ギレっていうんだよザコ。お前が何を糧としここまで歩いてきたかは知らないが……お前の復讐はもう果たされたのか?」
「!」
「違うんだろう。なのに今お前がやっていることはどうだ? 不要なしがらみに首を突っ込んで、正義のヒーロー気取って光の世界をのうのうと生きる馬鹿とつるみ仲間ごっことは大層な身分じゃないか。半ば折られかけている牙を剥き出して復讐者だと? 何もかも中途半端なただの餓鬼が。お前みたいなのが私と似てるってだけで虫唾が走るんだよ!」




