「半生――――あのとき燃え盛った二人の」
脳裏をよぎる戦術の条件。
眼前にはアヤメと、ココウェルと――――条件その一。
その二はどこにも見当たらない。
見当たる筈が無い。
――俺がやらなければならない。
マリスタを一撃で沈め、ギリートとトルトを相手に一人で斬り結んだ女を相手に。
リセルから届く敵の情報。
これらから導き出される弱点を、どうにか――
「何をそんなに考えてるんだ」
「……何?」
「お前に考える材料なんて無い筈だよな? おかしいな。ねえ王女様」
「ね――ねえってお前、」
「あれは劇からずっと拘束されていたんですよ、王女様も見たでしょう? それなのに急にこんな所へ送られて、何も知らないのが道理じゃないですか」
「……賢い知り合いがいるもんでな。事の次第は全て把握して――」
「感じられないけどな。かなめの御声の魔波は」
視界が光った。
「!!!」
光ると同時に展開した精霊の壁が間一髪間に合い、光の帯が障壁と共に崩壊していく。
今のがリセルの言った「光斬」か。一撃でも喰らえば――
「なんで防げた?」
「…言いたくないね」
「そうだ、今お前が考えてる通りだよ。私がこの技を使ったのはついさっきだ、お前に情報が行くはずがない。だがお前は当然のように魔法障壁で防いでみせたな。在り得ないんだよそんなこと」
「さてな。事実お前の情報は俺の下に来てる、それがすべてだ」
「魔女か? お前」
――――――!?
「劇の見過ぎか? 起きろよ」
「聞いたことがある。魔女は『契約』を交わした男と特別な縁で結ばれ、一心同体のような状態になると。一心同体ならテレパシーくらい使えてもおかしくないなあ?」
「・・・イカれちまったのか? 話にならねえな」
「顔に出てるんだよバーカ」
アヤメが満足げに嗤う。
その変わり様にココウェルが隣で固まっているのに気付いているのかいないのか、アヤメはそのまま俺に話し続ける。
「そうさ。私はイカれてる。だから嬉しいぞ、同胞に会えて」
「……同胞だ?」
「名演技だったぞ、お前がギリート・イグニトリオとの戦いで見せた狂気。おかげでこちらは興奮を抑えるのが大変だった――――あれがお前の本性さ。私には解る!!」
「え――アヤメ、それどういうこと?」
「いかにもクローネとしてのアドリブのように見せていたが私には解る! あれはお前の半生だ! 人生に絶望し復讐のため魔女の手を取り今ここに居る、お前自身の物語だ!! まったく私とよく似てる!!!」
「……私と、」
似てる……だと?




