「灯明――――真相への一歩」
――――ココウェルの表情が変わる。
この一言ですべてを察せたか。存外地頭はいいのかもしれんな。
そして……当の襲撃者頭目は眉一つ動かさず、か。
◆ ◆
「考えてみれば当然のことでしょ? 襲撃者の隊長にとって、姫を抱えてプレジア中を逃げ回るメリットなんか何一つない。僕らが王女を捕らえるつもりだと解った段階で携転石を使って転移、子石の全てか親石を破壊してしまえば、この作戦は完全に破綻する可能性だってあった」
茶の前髪を揺らしギリートが言う。
その言葉に顔面蒼白になる者がいる中、ガイツは冷静に首を横に振った。
「魔動石のある部屋は行き止まりだ。学長が管理する特別な携転石でしか移動することは出来ない場所だ。そんなところで親石を破壊してしまえば、それこそ奴らは逃げられなくなる」
「結果論ですよそれ。敵の転移先が魔動石の部屋だと判明――いや今も確定したワケじゃないですけど。判明したから言えることですよ。もしこれが別の場所だったら、彼らはまんまと逃げられてたかもしれないんです」
「――待てイグニトリオ。とすると奴らは、」
「そうですボルテール兵士長。問題になってくるのは、『なんで黒騎士がそんなことしたのか』ってことですよ。だってクソ無駄なことしてたわけでしょう、一国の姫が傍らにいるのに。それは何故か」
「回りくどい言い方してる場合かよ坊ちゃん」
トルトが苛立ちを隠さず言う。
ギリートは黙ってトルトを一瞥、珍しく言い返すことなく話を前に進めた。
「答えは僕らで考えるより……聞いちゃった方が速いんじゃないかと思うんですよ」
ギリートが、拘束され一塊にされた襲撃者達に近寄り。
その白い仮面を、取り去った。
『!!』
――現れたのは、誰も面識のない男。
仮面に収まっていたとは思えないほど厳つい、吊り上がった目をした大きな顔に無精ひげ。
男が苦々しげに顔を伏せたのを見て、ガイツは大きく息を吐きながらギリートを鋭く睨んだ。
「馬鹿者がッ!! 面の下など一番敵が見られたくない所だろうが、外した途端発動する魔装でも仕掛けられていたらどうするつもりだったッ!!」
「ああ、それを警戒してたんですかなるほど、そりゃ悪いことしましたね。でも大丈夫ですよ、たぶん――――そうですよね。襲撃者さん」
男は答えない。
詰問される仲間を、他の襲撃者も誰一人見ていない。
そんな彼らに、ギリートは憐れみを込めた眼差しで、
「……忠実ですね、貴方達は。でもだからこそ、裏切者の隊長を許さないで欲しいんだ」
『――――――!!!!』
真に倒すべき彼らの敵の名を、告げた。
『!?――』
襲撃者達に走った動揺を察知した少数の者達が、残らず困惑する。
ギリートの放った一言を――――ナタリーを除いた誰一人、理解することが出来ない。
「イグニトリオ……お前は」
「やっぱり、そうなんですね。皆さん、実は知らなかったんでしょ。プレジアに王女が来てることなんて」




