「必然、ア然」
「お前……!」
「君さぁ。貴族に向かってそういう態度がナメてるって言われてんの、いい加減解んないの? だから異端だっていうんだよ、お前はさぁ」
「既に廃された制度なんだろう? どの歴史書を読んでもそう書いてある。だったら俺がお前たちに礼儀を示す必要は欠片もありはしない。――舐めるのも大概にしろ。いい加減理解するべきはお前達だ」
「テメェッ――――大人しく聞いてやってりゃ調子に乗ってベラベラと!!」
「どこが大人しいんだよ狂犬共、言いがかりをつけてきたのはそっちだろう。証拠も無しに誰が殺人の計画だと? 風紀委員とは憶測や推量で人を追い詰める仕事なのか。大層な活動内容だ、さぞ学内の風紀も律されていることだろう」
「テメェエェェェエエェェエエェェ」
「ビージ、押さえて」
骨ばった体をした長身がいきり立つ大柄を押さえ、鼻筋の眼鏡を持ち上げる。
「憶測憶測と無礼な奴だ。そも我々が憶測でしかものを語れないとしたら、それは十中八九お前のせいだぞ異端。素性を何も明かしてないんだからな。世界は物騒だからね。素性も解らない者をそのままにしておける訳が無いだろう。そして、」
「ほう? 今、憶測で人を追い詰めていることを認めたのか?」
「最後まで傾聴しろ愚か者が。――そして、そうなると我々はお前の人間関係や周囲の者からの証言、一日の生活ぶりなどから、風紀委員会の名のもとにお前を厳正に調査するしかない」
「ハッキリ言ってやれよ。……異端ケイ・アマセ。風紀委員会は、貴様をこのプレジアに破滅的被害をもたらす不穏分子として、非常に危険視し始めている」
「だから、さっさと根拠を示してみろと言ってるんだ」
吐き捨てる。眼鏡が顔を険しくした。
「秘密だらけの君にそんなことを言われる筋合いはないんだよ。とはいえ、お前が怪しいことに変わりはない。魔法を一切使えない無能力者。顔立ちから明らかにリシディア人ではない上、生まれも育ちも一切不明確。にもかかわらず義勇兵コース所属。人とは多く交わらず、自室にこもってはずっと一人で何かをやっている。更に――我々風紀委員の構成員であったテインツ・オーダーガードは、君の凍結魔法によって危うく死にかけた。魔力の暴発だと言っているが、殺人未遂であることに変わりはない」
「そのクセ、女への色目使いには抜け目がねぇ。交流もほとんどないくせに、マリスタ・アルテアスさんを含む多数の女生徒に気にされている……外道な野郎だ。何に利用して捨てるつもりか知らねぇが、テメェのそれが魅惑の魔法なのは解りきってんだよ。魔法の力で女にチヤホヤされて嬉しいか? 勘違いクンよ」
……………………は?




