表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
849/1260

「かくて舞台に残った者は」




◆    ◆




 ガイツが告げんとしている言葉を悟り、誰もが耳を塞ぎかける。

 しかし。と、人々は周囲に視線を投げる。



 一瞬のことだった。

 数分前には、速すぎる勝鬨かちどきさえ上がっていたというのに――



 ――本部は壊滅。

 ――王女の確保は失敗。

 ――計画の発起人だったマリスタは瀕死ひんし

 ――一般人にさえ被害が出た可能性がある。



 襲撃者の確保には成功したが、それは局所的な勝利でしかない。



 ことが落ち着き、その後。

 一体どれだけ、プレジアに――――リシディアに、危機が迫ることだろう。



 ……やがて全員が、絶望に包まれた。

 打ちのめされ、途方に暮れ、無力に、虚無きょむさいなまれ――一人、また一人と肩を落としていく。



『――――今回の作戦は――――』




◆    ◆




〝ぷっ……〟

〝仕方ないよな???――――カスが何人犠牲になろうが〟



(…………ああ。畜生ちくしょう



「先生ッ! おい先生ッ!!! 何をボサッとしている、早く負傷者を――」

「…………気付くべきだった。あの女は――」

「――何を言ってる?」




◆    ◆




「お、おい大丈夫か会長っ」

「――王女を守るつもりなんか、これっぽっちもなかっ(・・・・・・・・・・)()ってことか……!!!」

「……何だって?」






◆    ◆




『――作戦は失敗だ』













『まだ。終わってません』













 ――――戦力外の少女の声が、絶望に沈む人々の鼓膜こまくらす。



『――誰だ?』

『中等部六年、グレーローブ義勇兵。ヴィエルナ・キース。作戦、まだ終わっていません』

『ど……どういう意味だ!』



 ペトラの声。

 全員が固唾かたずをのみ、少女の言葉に耳をそばだてる。

 全てを悟った少女は至極しごく冷静な調子で告げた。



携転石けいてんせき。まだ一つだけ、生きています』

『何ッ!?』

『持っているのか?』

『いいえ。持っていかれて……きっともう、使われました』

『は――!?』

『ふざけた言い回しを止めろッ! 誰が持っていった? 一体誰が使ったというんだッ!?』

『……彼女(・・)は、たぶん……』



貴方あなた黒騎士くろきしに勝てますか?〟



『……いいえ。間違いなく、()に』




◆    ◆




 小さな格子窓こうしまどのある扉に、頭を預け。



「…………たくしましたから」



 ナタリー・コーミレイは、祈るように目を閉じた。



「託しましたからね、ド畜生ッ……!!」




◆    ◆




「ひ、ひえ……!? ど……どこなのここ。その石で転移()んだの? ねえアヤメっ」

「少し安定した足場へ移動します」

「うひょっ!??! いっ……ッたいわね!! 飛ぶなら飛ぶって言えよ! ったく、ホラ降ろせ! んでさっさと答えろ、あの黒い奴ら一体何――」

「何も」

「――え?」

「貴女は何も知らなくてよいのですよ、王女」

「……は……?」

治療ちりょうを」

「え。え?」

「私のふところにある治癒魔石ちゆませきで、左腕を治していただけますか? 魔力をほとんど残していないのです」

「わ、あ……わかったわ、えっと……コレね」

「お願いします」

「しゅ、集中するっ。あ、後でちゃんと説明してもらうから――――」

「…………あなたは本当に愚か(優秀)な方ですね。王女様」

「――――なんでいるの(・・・)、」

「!」



 傷の向こうを見る王女の視線。

 その先は今しがた移動してきた、携転石けいてんせき親石おやいしがある場所。



「……!!」



 るはアヤメが予想せず。

 しかし最も、興味を持った(・・・・・・)人物。



「――――もはや神の導きだな。そう思わんか? アマセ」

「ケイ……!!!」



 ――名を呼ばれ。



 天瀬圭あませけいは、手の中の携転石けいてんせきを握り締めた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ