「処理」
何かが、噛み砕かれる音と同時に。
「ッ!!?」
テインツに、アルクスや義勇兵達に取り押さえられた襲撃者の懐で、得体の知れない魔波が弾ける。
(何だ……口の中に魔装具を仕込んでたのか!?)
「おいお前ッ!! 今何を――――口を調べてくれ!」
『了解!』
共闘した義勇兵二人が口内の検査に取りかかる間に、テインツは慎重に襲撃者の懐を改める。
出てきたのは、
「……砕けた魔石?」
自分の言葉に、テインツはそれが携帯転移魔石とではないかと思い至る。
周囲を見渡してみれば、他の襲撃者の下でも同様の破壊が起こっているようだった。
「オーダーガード! こいつ、奥歯が魔装具になってる!」
「これを噛んで発動したみたいです!」
「追ってこれないよう壊せる細工があったか……でも誰が? 襲撃者は全員――――」
「黒騎士はどうなった? テインツ君」
最悪の可能性に気付いたテインツに、疲労のにじむ声がかかる。
声の先には、色濃い疲労を見せるギリートの姿があった。
「分からない、でも……ッ会長、こいつらのボスが携転石の破壊を指示したみたいなんだ! つまり――その、」
『衛生班を風紀室前へッ!!!』
最悪の報が。
かなめの御声で繋がる者達に、届けられる。
『本部を壊滅させられ負傷者多数!! マリスタ・アルテアスは魔力を使い果たした上背骨を折られて重体だッッ!! 急いでくれ!』
『標的はどうなった!! 敵は!!』
ガイツの声。
ペトラは一瞬の沈黙の後……発した。
『敵は……親衛アヤメは王女を奪い転移で逃走した! すぐに追う、敵兵の魔石を確保して――』
『――魔石は破壊された。一つ残らずだ!』
――――ペトラの絶句を、全員が聴く。
「手の空いている者は風紀室前へッ!!」
その沈黙を破ったのは校医、パーチェ・リコリスだった。
「先生っ、ハイエイト君はっ」
「そのまま集中治療房へ!! ヘタに動かさないでね、抵抗のお陰で急所は逸れてるけど体は辛うじて繋がってるだけよ! 搬送係は詠唱終えて遅延を!」
『――――本部は機能せず、計画の発起人も意識が無い。生徒会長も先の戦闘で消耗しているだろう――――ここからは俺が指揮を執る。異存がある者は名乗り出ろ』
平静を取り戻したらしいガイツの声。
名乗り出る者は誰もいなかった。
『では指示を出す。参加者対応班は動ける者同士で現状を報告し合い責任者を選定、俺に報告のち事態の収拾に当たれ。負傷者の確認を最優先に行動しろ――――リリスティア・キスキル』
『は、はい』
『本部は動けん。対応班の力も借りながらでいい、イベントの進行を任せていいか? 君の影響力ならやれると判断する』
『――解りました』
『頼む。――戦力になる者は転移魔法陣前に集合のち四人組を組め、敵を捜索する。消耗の激しい者は休息のち、校医と参加者班責任者に指示を仰げ』
『了解!』
『パーチェ・リコリスにはそのまま衛生班統括を任せる』
『ほい』
『編成は以上だ。そして――――最後に大切なことを伝える』




