「PHASE21:捕エタ!!!!」
意図せぬ方向へ大きく傾くビージの身体。
背から彼を押したガイツの働きにより、死角から迫っていた襲撃者の黒煙の手を紙一重避けることに成功する。
「――の野郎ッ!」
強化した拳を振るうも、あっさりと躱される。
英雄の鎧で強化した目でさえ、彼らの動きを正確に追いきれない。
(そんだけ力の差があるってのかよ……!)
「違うぞ」
「へ? へ、兵士長」
「奴らと我々にそう速度差はない。だが奴らの独特な動き――あれは恐らく、こちらの動きを魔波の流れで感知しているんだ」
「魔波の流れェ?」
「来るぞ!」
ビージの眼前に一体。
ガイツの前に一体。
「――ッずりゃァ!!」
瞬転で迫る黒煙の手掌にビージは――光とわずかな砂を帯びた掌で迎撃、正面から激突させる。
「――――!」
「おおおおおおっっ!!」
魔力の火花が散り、拮抗し――――やがて押し戻す。
襲撃者は、ビージの一撃に圧し負け、腕をあらぬ方向へ振り乱しながら後退する。
「ッ――まだまだァ!」
勢いに乗り追撃するビージに、またも死角から迫る第三の黒煙。
それを、
「させん」
――黒の手元を吹き抜けた疾風の雨が打ち、無効化する。
崩れた体制を整え着地する襲撃者。
そこに吹き飛ばされてくるもう一人の黒装束。
二人の目の前に降り立つは、風を帯びた大剣を肩に担ぐ巨躯の男――――ガイツ・バルトビア。
「どれ……そろそろ一人捕らえようか」
『――――!』
――石火の如き一太刀が襲撃者を分断する。
短く太い黒剣を構えた黒装束はとっさに、互いの間から半歩引きながら捻転、背後から迫った巨大なひと薙ぎを共に受け止める。
巨岩の落下の如き衝撃をなんとか殺し切った瞬間、
「『吹きすさべ』」
『ッ――――!!?』
二人の間を走った斬痕から、嵐が吹き荒れた。
突然の嵐に体を取られ宙に投げ出される襲撃者。
仮面を押さえ必死で瞬転による脱出を試みようとした一人の黒装束の背に――――背後から大きな手が、しっかりと当てられる。
「仮初の就縛!」
――――びきり、と体を硬直させた襲撃者が動かなくなる。
ガイツはもう一方の手で敵の首根を掴むと難なく嵐を脱し――――捕らえた襲撃者を床へと叩きつけた。
「――さあ。まずは一人目だ」




