「PHASE14:敵 ノ 手ノ内 ヲ 解析 セヨ」
シャノリアを刀で押し、反動を使ってアヤメが後退する。
シャノリアの手の動きに合わせ、周囲に散った水がアヤメを――――否、
「げぼっ、ご、ぼほっ……ッアア!! あ――アヤメッ!! お前マジごほ、」
「大丈夫ですか、ココウェル」
「危うく溺れ死ぬとこだ!!」
「この水はあれの魔力で編まれています。体内に残ることは無いかと」
「そういうこと言ってんじゃ――」
「失礼」
「んぎゃぁあっ!!? おまっひゅごくなら言え、舌噛ん……!!!」
黒騎士の小脇に抱えられた、王女ココウェルを拘束するため、まっすぐにアヤメへと向かう。
アヤメは巧みな体捌きでこれを躱し転移魔法陣へと近づこうとするが――――離れる事無く、そして自在に形を変えて付いてくる水の包囲網におちおち進むこともままならぬ。
(中級魔法水祭の乱波と無空の牢心の無詠唱でここまで的確に、速く――)
「拿捕」
伸びていた複数の水の柱。それらの先端が大きく開き、先のように二人を飲み込もうとする。
アヤメは一方の水を剣で薙ぎ、魔素の結合が緩んだそこに体をぶつけ、水の網を突き破る。
「いでっいってえッ!! お前このホント――死んだらどうすんだわたしがッ!!」
「大丈夫ですココウェル。少なくとも彼らは、あなたを傷付けるつもりなど微塵も無いようですから」
「あたりめーだろ!! わたし傷付けたら戦争になんだから――――そうだ! お前達、マジで馬鹿か!?」
抱えられたまま水浸しの髪を振り乱し、ココウェルが勝ち誇ったように言う。
「タダで済むと思うなよお前らッ!! 一国の王女にこんな狼藉働いて、この先のうのうと生きられると思ったら大間違いだからな!!! プレジアもろとも潰してやるッ!! 全員磔にして処刑してやっからッ!!! ヒャハハハッッ!!」
「げ、言動が三下以下のソレなのだけど……本当に王女なの?」
「影武者ですよ」
「サラッと何嘘八百言ってんだアヤメおまッ――ふむゅぐ?!?!」
「…………王女であるのは間違いない、みたいね。頭抱えちゃうけど」
アヤメの身体に顔を押し付けられ口を塞がれるココウェルを見て、呆れ声でそう言うシャノリア。
アヤメはシャノリアから目をそらさないまま、目を細めて漫然とうなずいてみせた。
「……そうだ、一国の王女であるのに変わりはない。そんな方に、臣下に手を出した――その一点だけをとっても、この学び舎はこれまでのようにのうのうと存在することが出来なくなる。そんなことも分からなかったのか」
「解っていたわ。よーくね」
「ほう。では元から心中でもする腹だったのか。貴様等プレジアの者共は」
「そういうものに抗うためのプレジアなんだよ、黒騎士さん♪」




