「困惑、次いで不穏」
自分のことで精一杯なのに、こちらの言葉には必ず何らかの反応(会話が成立しているかはともかくとして)を示してくれるパールゥ。きっと人が好いのだろう。
……それを口先で振り回している俺は、端から見れば悪人かもしれないな。
カウンターの奥にいる他の図書委員から、いやに視線を感じるし。
「でも、多分パールゥの気持ちは伝わったから。ありがとう」
「き――――、きもちっ??」
「うん。素性も知れない転校生に、親切にしてくれてありがとう。正直、凄い助かってる」
「そそ――――そそそそんな!! 私なんて別に、」
「助かってるって。――俺から頼まなくても、そうして通訳魔法を使ってくれるところとか」
「――――――――――ひぇ」
?
「じゃあ俺、そろそろ行くから。俺も今通訳魔法を練習してるところだから、今度話すことがあったらお披露目するよ。クラスの皆にばかり負担をかけるわけにいかないからね」
「は……は。はぃ」
「ああ、体調が悪いならホントに、無理しないで休んだ方がいいと思うよ。じゃあまた、パールゥ」
「ま。また……」
発声だけでいっぱいいっぱいといった様子のパールゥに背を向け、山と積まれた本を抱える。
後で、あの一応校医らしい悪女に声をかけて、図書室に体調の悪そうな女生徒がいる、と声でもかけておくか。覚えていたら。
さあ、時間が惜しい。これらもまた今日のうちに読み終えて、今週末の休みにはまた演習形式の鍛錬を――――
――肩を強く突かれ、体が本と共に吹き飛んだ。
乱れ落ちる本と共に床に打ち付けられる。そう広くない廊下でのことに周囲の生徒が一斉に騒めいたのが分かった。
息を吐き出して気息を整え、俺を突き飛ばした者を見上げる。
そこにはいつか同じアングルで見た、大柄な男と、細長い眼鏡の男がいた。どちらもベージュローブだ。
大柄の方は……この間テインツと一緒にいた奴だな。
『よぉ、「異端」。こないだは我々に随分と無礼な真似してくれたじゃねぇか』
『すぐにわかったよ。君みたいな爪弾き者ってのは、どこにいても悪目立ちするからね』
二人の腕には、獲物を狩る熊が刺繍された腕章。
ナイセスト・ティアルバー率いる、プレジア魔法魔術学校風紀委員会のメンバーである証だ。
大方、先日のテインツの件の蒸し返しだろう。なんて厄介な連中だ。




