「Interlude―102」
「らじゃですっっ!!!」
少女たちの明るい声を背後に、医務室を去っていくペトラ。
活気づく室内。リセルはそれを見て、――いつかの「呆気」を思い出していた。
〝頼むッ……勝てッ!! ティアルバーさんを……プレジアを変えろッッ!!!〟
「ティアルバーを倒せ」。
そんな号令の、願いの下に、対立しいがみ合っていたすべての者達が結集し、一人の少年に声援を送っている――――その時感じたものと同じ呆気を。
「……システィーナさん」
「はい。なんですか先生」
「あなたも確か、この作戦のことを知ってるんだったわよね?」
「はい。先生方も、でしたよね。どうかしましたか?」
「この作戦、アマセ君は知っているの?」
「え? アマセ君、ですか? どうしてそんなこと――」
「実技試験の時も、彼ってその中心にいたじゃない? あの時と同じように今回もイレギュラーだらけだから、たぶん関わってるんだろうなーって思ってるんだけど、ホラ。今捕まってるじゃない」
「はい、捕まってます。だから、今回の作戦にアマセ君は直接かかわってないと思いますよ」
「……そうなの」
「んでも、役に立ってないわけじゃないぜ!」
会話に割り込み、その広い額の両端で前髪を揺らしながら、パフィラがニカッと笑う。
「アマセ君のじょーほーのおかげで、マリスタも私も作戦がたてられたんだし!」
「……そうね。彼がいなかったら、マリスタだってああも奮い立たなかったかもしれないしね」
「奮い立つ?」
「はい――――アマセ君がアルクスに捕まった、学祭が中止になったって劇のメンバー全員で聞いて……マリスタ、ほんと今にも死にそうなくらい落ち込んでたんですよ。でも先生方が学長に抗議する姿を見て。それで、何か思う所があったんでしょうね。あの子言ったんです。『自分の前を歩いてる人に、自分の道を塞がれて安心してちゃだめだ』って。私達の問題だから、私達が動かなきゃダメだって」
「…………」
「最初聞いたときは、なんて言ったの? って空気だったんですけど。そのうちみんな、なんとなく解っちゃったんですよね。似たようなことを言ってた人が、近くにいたものだから」
「似たような人?」
「大えーゆー、クローネだよ!!!」
リセルの視界に飛び込むように現れるパフィラ。
そうして寄ってきた彼女に、システィーナは背後から手を回した。
「『絶望してる時も希望を諦めるな』……ああ、クローネが言ってることってそういうことなんだろうなって、図らずも腑に落ちちゃって。そうしたら急に、状況をどう打開しようかって話が活発になってきて、じゃあデモとかやってみるか、って。誰からともなく出たんですよ、そういう話が」
「テキトーに言ってたけどな!」
「そうね、みんなテキトーだった。でもそんなテキトーな案に、マリスタったら二つ返事でOK出しちゃって……気が付いたらホントにデモしようってなってました。その後ホント大変でしたよ。この作戦の準備以上に」
「ヤベーかったよねー! もうてんてこまいまいすぎて何してたか九ワリおぼえてねー!」
「それくらい動いたよねー。ふふ……でも、そうしたら。なんか、何とかなっちゃってて。それで、ああやっと一息つける、って思ったら……今度はこの作戦を、マリスタがぶん投げてきたんですよ。ほんともうメチャクチャ。ね」
「ねー!!」
「確かに忙しないわね……すごい痩せそう。でもなんだか、」
「はい?」




