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「PHASE１１：共同戦線　ヲ　開始　スル！」

「あなた達は理想を抱《いだ》くことを諦めている。理想が理想でしかないと知っていることと、理想を掲げることすらしないのは違う」

「戦火の中でも言えるか？　君達は戦場の悲惨《ひさん》さを――」

「言えます。たとえどんな絶望が私達の前に立ち塞《ふさ》がっても。皆の先頭に立っていく私達こそ、言い続けなきゃいけない。だってそれこそが最良の道なんですから」

「――最良の、」

「そうですっ、」

〝万策《ばんさく》尽《つ》くれば億策《おくさく》練るべし！！！〟

「前に立つ者の役目は、ただ指揮《しき》を飛ばすだけじゃない。あなたは皆をどこに連(・・・・・・・・・・)れていきたいのですか(・・・・・・・・・・)？」

「――――――、」

　――若き戸惑いを浮かべた顔で。

　ガイツは、無意識に右足を半歩引いていた。

「…………作業中に邪魔をしてすみませんでした、皆さん。引き続きよろしくお願いします」

　リアは印象的な瞳をガイツに残し、黒髪を揺《ゆ》らして背を向けた。

　勇気と決意、そして少しの恐れが垣間見《かいまみ》える、若者の瞳。

　正義漢と使命感ばかりが先行し、勢い以外は何もない思春期をこじらせた学生の群れ。

　彼らは学生だ。

　ほとんどの者達が能力としてアルクスに劣《おと》り、また社会的に責任を取ることが出来る者も存在しない。ともすれば敵側である可能性もある。

　国家の根幹《こんかん》さえ揺るがす可能性さえあるこの戦いに、そんな烏合《うごう》の衆《しゅう》を組み入れるわけにはいかない――――そう考え、ガイツはずっと学生達を遠ざけ信じず、自棄《やけ》や勢いに頼った自殺行為を防ごうと監視《かんし》を続けてきた。

〝苦しみながら今までの自分と戦いながら変わろうとしてるんですッ！！　それを、それを――〟

（だが、現実に今こいつらは行動を起こしている。攻めあぐねていた我々と違い、作戦を立て、たくさんの仲間を――――）

「ハっ。まさかあんたと一緒に作業する日が来るなんてね、メルディネス。お友達が心配でしょうけどこっちにも集中してよね」「わかってるのだわ。あなたこそ変なヘマをしないでよね。……期待しているのだから」「…言ってくれる！」

「謝り続けていくよ。これまでのこと全て。だから……」「それはこっちも同じだ、オーダーガード。同じ次元でいがみ合ってたんだから」「……ありがとう、バンテラス君」「こちらこそだ。だから精一杯やってやろうぜ。この任務が貴族と『平民』の、最初の共闘《きょうとう》だ！」「ああ！」

〝謝ってくださいよ今言ったことッ！！！〟

「すまなかった」

　――――風紀委員《ふうきいいん》室《しつ》中《じゅう》の目がガイツに集まる。

　しかし頭を下げた兵士長《へいしちょう》の姿を皆が目に焼き付けるより早く、

「作戦はここからが本番です、皆さん。どんな些細《ささい》なイレギュラーも見逃さないよう、任務に集中してください」

　ただ一人その言葉を背中で受け止めたリア・テイルハート(風紀委員長)が、皆の意識を作戦へと引き戻した。

『――――了解！』

　再び騒《さわ》がしくなる室内。

　ガイツはゆっくりと顔を上げ、歩き出し――――風紀委員長の横に、並び立った。

「それで。我々はどう協力すればいい(・・・・・・・・・)、委員長」

「主に第二層を警備する風紀委員と義勇兵《ぎゆうへい》コース合同班の遊撃《ゆうげき》をお願いします。二層以外の場所も警備が薄いので回っていただけると」

「早急《さっきゅう》に手配しよう」

「が、ガイツ……」「兵士長……！」

　背を向け、委員会室を後にしようとするガイツ。

　今度はリアがその背を見送る番だった。

「ありがとうございます。学生(わたし)達の作戦を認めてくれて」

「…………無駄口を叩かず任務に集中しろ。国家の大事だ、僅《わず》かの油断も許されんぞ」

「……はい！」

「了解っ」

　兵士長の意気に、風紀委員長と生徒会長が応え。

　作戦本部は、本格的に始動した。