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「本来閑話休題的内容」




◆     ◆ 




「ア……アマセ君。これ、昨日借りた本だよね?……もう読み終わっちゃったの?」

「ああ――次はこれを頼む」



 予想してはいたが、この世界の本に文庫版ぶんこばんは存在しない。

 その全てが分厚い紙や布で装丁そうていされた重厚じゅうこうな本ばかり。こうして大量に重ねて運ぶには、視界の一部を確実に犠牲にしなければならない。不便な話だ。先日は通訳と翻訳だったが、ものを浮かべて運ぶ魔法も近い内に習得した方がいい。



 ……ひょっとすると、この世界で文庫本なんてものを考案したら、俺は小金持ちにくらいなれるのではないだろうか。



 俗な話ではあるが、俺とリセルの目的を遂げるためにも金は必要だ。

 あのリセル(悪女)のここでの賃金を当てにするというのもしゃくな話ではあるし、俺もどうにかして、ひとまず食い扶持ぶちくらいは稼げるようにならないといけない。

 ここで傭兵ようへいとやらをやれば報酬は出るのだろうか。外に出たとして、アルバイトのような俺の世界と変わりない雇用形態こようけいたい給与体系きゅうよたいけいが存在するのだろうか。教師連中なら何か知っているかもしれない。いっそ、そういう年少クラス向けの本を探してみようか。『しょくぎょうずかん』など、探せばありそうではないか。

 いやしかし、既に借りたい本は制限いっぱいであることだし、急を要する事柄でもない。ひとまずは学校の庇護ひごの中、ナイセストを倒せるくらいの力を手に入れることが先決――――



「あ、アマセ君? 貸出処理、終わったけど……」

「ん……ああ。ありがとう」

「あの……どうかしたの? 上の空だった、気がしたけど」



 木製のカウンターにうずたかく積まれたハードカバーの本の隣からチラリと顔をのぞかせ、パールゥが右手で肩口の桃色髪をいじる。疲れているのか、その顔はどこか熱っぽいようにも感じる。そういえば、対応もどこか上の空だ。――いや、上の空なのはいつものことだった気もするが。



「それはこっちの台詞セリフだよ。パールゥこそ、随分ずいぶん体調が悪そうだ。委員会の仕事のし過ぎじゃないのか」

「えっ。あ、ああいや、ううん。大丈夫だよ。あ、ありがとう。ごめんね、心配させちゃって」

「お礼言うことなんてないよ。クラスメイトなんだし」

「そ……そう、かな。そうだね。なんか、おかしいね私。ごめん」

「ほら。また」

「あっ……あ。ご……じゃない、その、えっと」



 ……ロード中のパソコンのように、くるくると回転するパールゥの脳内が透けて見えるようだ。この子は、一体何をそんなにパニックに陥っているのか。

 所謂いわゆる対人たいじんが弱い人なのかもしれない。となると、あまり話しかけるのも悪いか。

 ニコリと微笑ほほえみを作り、まゆゆるやかな八の字を作る。



「……混乱させたみたいだね。ごめん」

「あ、アマセ君が謝ることないよっ!」

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