「PHASE8:ソノ 偏見 ヲ 打破 セヨ」
「……ため息も出ん。落ちる所まで落ちたのだな、プレジアは」
「おっとっと、いきなり貴族至上主義的な反応ですねえ兵士長殿」
「休学していたせいか、お前も忘れてしまったようだな生徒会長。いち委員会である風紀委員会が、何故殊更に生徒会と同等の扱いとされるのか。それは学生共が空気を読みあった結果でもなんでもなく、文字通り彼らがプレジアの守護を任されているからだ」
「二十年前、プレジアの創設と同時にリシディアの政治体制が……といっても軍部くらいのものでしたが変わって、貴族は個人的な軍隊を持てなくなった。要するにシゴトを失った貴族の坊ちゃん嬢ちゃんの受け皿的役割を果たした、寄せ集めの自警団、治安部隊……それが今の風紀委員会の前身だって話でしょ。耳にタコできるほど聞いてますよプライベートでも話されることですもん」
「成程、ではただの馬鹿なのだな貴様等は。風紀委員に求められる素養を解っていながら、こんな何の権威も実力も無い女学生を頭に据えたのか」
「いやいや――」
「違いますよ」
リアが制するように手を伸ばし、ギリートの前に出る。
「ちゃんと選ばれたんです、私は。風紀委員会の総意で」
「黙っていろ女学生。俺は今生徒会長と話を――」
「女学生って言うの止めてください。私は風紀委員長です」
「解ったから黙っていろ。邪魔だ」
「黙りません。その質問は私が答えるべきことです。風紀委員長の選定に会長は関わっていないんですから」
「この女学生を下がらせろ、お前達」
「!」
『はい』
「待て」
ずしりと芯の通った声が、アルクス隊員の動きを一瞬止める。
その間に、風紀委員ペルド・リブスは委員長の傍らに立った。
「『待て』だと?」「貴様、それは私達に言ったのか学生風情が!!」
「不当な実力行使は校規違反だ、そのくらいも弁えないのかアルクスとは。そして勘違いしているようだが、俺達風紀はアルクスの手下じゃない。礼節をもって接して欲しいなら同様の礼を示してみろ。――それとも俺達のようなガキに礼節はいらないとでもいうのか!? 答えてみろッ!!!」
押し黙るアルクス達。
眉根を寄せたガイツを、リアは静かに見返した。
「……『傲慢と浅薄に満ちた温床で肥え太』っている」
「――何」
「以前、兵士長がくださった言葉です。でも――傲慢と浅薄に満ちた温床で肥え太っているのは、一体どちらでしょうかと、そう思えてなりませんね、これでは」




